予防接種と国家賠償｜川崎市の信長行政書士事務所 | 信長行政書士事務所｜川崎市の行政書士が情報を提供します

　現在、日本ではコロナウィルスのワクチンが摂取できるようになりつつあります。しかし、これについてはアンケートで、副反応が心配という声があるそうです。

新型コロナワクチン接種、「接種希望」が8割
不安は「副反応」が5割超、信頼できる情報少ないとの指摘も
情報元：株式会社プラップジャパン（https://digitalpr.jp/r/46784　ー　2021年4月21日 水曜日公表）

株式会社プラップジャパン様から引用させていただきましたが、ホームページ内ではグラフもご覧いただけます。

予防接種で副反応が出たら法的には？

　予防接種を受けて、万が一、副反応が出たらどうなるのでしょう？この点について、最高裁判所が平成3年4月19日に判断した事例があります。

事案の概要

　国は予防接種法に基づいてA保健所に予防接種を指示し、X子（接種当時生後6か月）は1968年に痘そうの予防接種を受けましたが、次の副反応による後遺障害が残りました。

1. 半身まひ
2. 知能障害

両親及びX子は、国と市を相手に、国家賠償請求を行ったというものです。

2審ではこの訴えは認められませんでしたが、最高裁は原判決を破棄し、差し戻しました。

理由

　予防接種によって重篤な後遺障害が発生する原因としては、予防接種を受けた者が、次の二つのどちらかに当たる場合が考えられると最高裁は述べています。

1. 禁忌者（予防接種を受けてはいけなかった者）であった場合
2. 後遺障害になりやすい体質だった場合

そして、確率的には圧倒的に「１.＞２.」だから、予防接種によって後遺障害が発生した場合には、特段の事情が認められない限り、予防接種を受けた者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当としています。そして、最高裁によって差し戻された控訴審では、国と市の賠償責任が認められています。

コロナウィルスのワクチン接種でも損害賠償は認められる？

　ところで、コロナウィルスのワクチンによって副反応が出た場合でも損害賠償が認められるのでしょうか？

　答えとしては、「必ずしもそうではない。」としか現時点では言い切れないでしょう。ですので、国は予防接種に関する不安を軽くするために、一定の法整備をしています。

損失補償契約に関する事項
政府は、新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの供給に関する契約を締結する ワクチンの製造販売業者又はそれ以外のワクチンの開発若しくは製造に関係する者を 相手方として、当該契約に係るワクチンを使用する予防接種による健康被害に係る損害を賠償することにより生ずる損失その他当該契約に係るワクチンの性質等を踏まえ 国が補償することが必要な損失を政府が補償することを約する契約を締結することができるものとすること。（附則第８条関係）
情報元：厚生労働省「予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律等の施行について」（健発１２０９第２号ー令和２年 12 月９日） https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T201210G0070.pdf

コロナウィルスによる混乱はまだ収束しませんが、混乱の中では正確な情報を収集することが大事です。そして、確かに不安はあるけれど、他方で補償についても整備されつつあるというのも事実です。ワクチン接種を受けたい方もそうでない方も、お互いの意見は尊重し合うとよいでしょう。

　また、もし不安であれば、誰かに相談してみるといいと思います。例えば、神奈川県では相談窓口があります。

川崎市：https://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000126170.html

　当事務所でお力になれることを挙げれば、診断行為や治療行為はもちろんできませんが、どのような国の補償制度があるのかとか、あるいはこんなときには詐欺的な手法による通信販売などが増加する傾向あります。消費生活専門相談員である行政書士として、そのような相談には対応できますので、何かあったらお問い合わせください。

また、以上のお話は、なるべく一般の方がわかりやすいようにしているので、より詳しく内容を知りたい方は、下記参考資料から原文をご覧いただくことをお勧めします。

参考資料

• 最高裁平成3年4月19日第二小法廷判決（民集45巻4号367頁）
• 別冊ジュリスト№249「消費者法判例百選［第2版］」有斐閣（2020年9月15日）198、199頁