「断る」ことで生じる効果|川崎市の信長行政書士事務所

query_builder 2021/05/07
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 断るのが苦手な方は、結構多くいらっしゃると思います。私も、あまり得意ではありません。しかし、法的に「断る」ことによって得られる利益は結構あります。特に、消費者関連法において「断る」ことは非常に重要です。


特定商取引法における「断る」

訪問販売において

 訪問販売において、消費者が次のように「断る」ことをしたにもかかわらず、継続して勧誘をした場合には、事業者に行政処分が下ることがあります。


契約を締結しない旨の意思を表示すること。(特商法第3条の2第2項)

 これにより事業者は、その契約の締結については勧誘をしてはならないという制約が生じます。なお、ここにいう「契約を締結しない旨の意思」の表示とは、具体的には、


  • 「いりません」
  • 「関心ありません」
  • 「お断りします」
  • 「結構です」
  • 「間に合っています」


など明示的に契約締結の意思がないことを表示した場合をいいます。「今は忙しいので後日にして欲しい」と告げたのみでは足りません。


家の門戸に「訪問販売お断り」シールを貼るのは?

 国は、訪問販売お断りシールを貼ることに特定商取引法上の意味はないという見解を示しています。


例えば家の門戸に「訪問販売お断り」とのみ記載された張り紙等を貼っておくことは、意思表示の対象や内容が全く不明瞭であるため、本項における「契約を締結しない旨の意思」の表示には該当しない。
情報元:特定商取引法ガイド「特定商取引に関する法律第3条の2等の運用指針―再勧誘禁止規定に関する指針―」(令和2年3月31日公表)3頁 (https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20200331ra03.pdf)閲覧日:2021年5月3日15時34分

しかし、あくまでこれは「特定商取引法上意味はない」というのであり、地方公共団体によっては、訪問販売お断りシールに法的効果を与えている自治体もあるようです。たとえば、北海道では、北海道消費生活条例第16条第1項に基づく同条例施行規則別表4(7)に違反したとして、事業者に勧告を行っている例もあります。


勧誘拒絶後の勧誘(北海道消費生活条例第 16 条第1項に基づく同条例施行規則別表4(7)) 事業者は、玄関に「訪問販売お断り!」と記載されたステッカーを貼付し、勧誘を受けることを拒絶する旨の意思を示している消費者の住居を訪問し、売買契約等の締結について勧誘し、契約を締結させた。
情報元:北海道環境生活部くらし安全局消費者安全課「プレスリリース」(2020年11月11日公表)2頁(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/sak/021111kohyo.pdf)閲覧日:2021年5月3日15時47分

事業者の方も消費者の方も、法律のみならず条例からもトラブルの予防や解決方法を見出すことができるかもしれません。ちなみに、私は玄関に訪問販売お断りシール貼ってます。一時期、宗教勧誘が度重なって試しに貼ってみましたが、それ以降パタッとなくなりました。法的な意味はなくても、それなりの効果はあるかもしれませんので、勧誘にお困りの方は試す価値ありです。


このときの効果

 断ったにもかかわらず勧誘を継続した事業者は、業務改善命令や業務停止命令等の処分が下されるおそれがあります(特商法第7条第1項、同法第8条第1項及び同法第8条の2第1項)。これについては、「特定商取引法違反秘儀情報提供フォーム」(クリックすると、別ページに飛びます。)という情報提供窓口などもありますから、必要に応じて情報提供するのもよいでしょう。もっとも、正確な証拠が必要とされるのは言わずもがなです。


消費者契約法における「断る」

不退去(消費者契約法第4条第3項第1号)

 特定商取引法とは別に、「帰ってくれ」と言ったのに帰ってくれなかった場合には、その契約は取り消すことができる場合があります。たとえば、「お引き取りください。」と言うのも、同じです。このほか、消費者契約法では、手振り身振りで動作した場合、つまり口にはしなくても断ることと同様の効果が生じる場合があります。


基本的には、退去すべき旨の意思を直接的に表示した場合(例えば、「帰ってくれ」「お引き取りください」と告知した場合)をいう。これを間接的に表示した場合については、例えば以下のアからウのようなケースであれば、直接的に表示した場合と同様の要保護性が消費者に認められ、相手方である事業者にも明確に意思が伝わることから、社会通念上「退去すべき旨の意思を示した」とみなすことが可能であると考えられる。
ア 時間的な余裕がない旨を消費者が告知した場合
例:「時間がありませんので」「いま取り込み中です」「これから出かけます」と消費者が告知した場合
イ 当該消費者契約を締結しない旨を消費者が明確に告知した場合
例:「要らない」「結構です」「お断りします」と消費者が告知した場合
ウ 口頭以外の手段により消費者が意思を表示した場合
例:消費者が、手振り身振りで「帰ってくれ」「契約を締結しない」という動作をした場合
情報元:消費者庁「逐条解説(平成31年2月)第4条」51頁 ※太字下線は筆者加筆 (https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/annotations/pdf/annotation_190228_0004.pdf
)閲覧日:2021年5月3日16時07分

退去妨害(消費者契約法第4条第3項第2号)

 今度は、「帰る」といったのに帰してくれない場合です。これも、契約を取り消すことができる場合があります。手振り身振りでも構わない場合があるのも、前述の不退去のときと同様です。


まとめ

 消費者関連法のうち、特に特定商取引法と消費者契約法は、消費者が望まない契約をしたときに有用です。「断ることが苦手」という方も、勇気を出して断ることには一定の効果が見込まれるということをお含みおきいただくと、断る勇気が出ますのでおすすめです。あとは、ご夫婦の方や、同居人の方がいらっしゃる方でしたら、「同居人と一緒に決めなければいけないことになってますから」と言うのも効果的です。セールスマンは最初に「おうちのことを決めるのは、あなた一人でいつも決めてますか?」といった探りを入れてくる場合があります。そのときには、「いえ、一人では決めてないんですよ」と先に伝えるのも効果的です。これにより、無理な勧誘をしにくくなることがあるからです。ここで「えぇ、一人で決めています」と言うと、「じゃあ帰ってくる前に決めてしまいましょう!」と勢いづく場合があります。これは私、何度か経験しています。予防策としてぜひ。

 なお、断ったことを示す証拠として、ボイスレコーダーはおすすめです。いまは性能のいいスマホアプリがありますから、それでも十分事足ります。被害を予防するためには、備えあれば憂いなしです。もっとも、よい事業者が訪問してくれれば、問題は少ないでしょうが。

 また、特定商取引法については、訪問販売についてのみ触れましたが、電話勧誘販売についても同様の規定があることを付言しておきます。

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