特定商取引法改正案の概要について|川崎市の信長行政書士事務所

query_builder 2021/05/11
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 第204回国会(常会)提出法案の中に、「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案」があります。現在、国会で審議中です。これは、次の法律の改正を主とするものです。


  • 特定商取引法
  • 預託法
  • 消費者裁判手続特例法


今回は、特定商取引法の改正について、概要に触れたいと思います。


今回の特定商取引法改正案の内容

 今回の特定商取引法改正案の内容のうち、重要な点は次のとおりです。


  • 申込者の承諾を得て、事業者から消費者に対する交付書面が、電磁的方法により可能になること。
  • 消費者から事業者に対するクーリングオフが、電磁的方法により可能になること。
  • 通信販売において、消費者が購入する際の表示義務を追加したこと。
  • 事業者が消費者に対し、商品を送り付けるとともに契約の申込みをした場合において、従来あった消費者の保管期間(14日間)を撤廃したこと。


 私が読み取った点で事業者の方と消費者の方に重大な影響を及ぼすのは、特に上記の点だと思います。このほか、事業者の方にとって、業務停止命令等の行政処分の範囲が拡張されている点も気になるところではありますが、この点も追及すると長くなってしまうので、またの機会に。今回は、交付書面についてみていきたいと思います。


交付書面とは

現行法

 交付書面とは、事業者が、特定商取引法に基づき消費者に交付しなければならない書面のことをいいます。これについて現行法では、①概要書面、②申込書面並びに③契約書面があり、まとめると下記(スマホからだとちょっと見にくいかもしれません…)のとおり、それぞれの事業者は、消費者に対し、それぞれの書面交付義務があります。



訪問販売通信販売電話勧誘販売連鎖販売特定継続的役務提供業務提供誘因販売訪問購入
概要書面××××
申込書面××××
契約書面×


 例えば、訪問販売で契約を締結したときに交付する書面は、実際にこちら(公益社団法人日本訪問販売協会(JDSA)のページへ飛びます。)をご参照いただくとより正確に把握できると思います。このように、特定商取引法の適用対象となる事業者は、それぞれの書面を交付する義務があり、これに反すると、①クーリングオフの起算日が確定しない、②行政処分が下るということがあります。なお、書面にはかなり厳格な記載が求められ、一部の欠落も認められない場合があることは、当ブログでもご紹介した通りです。


改正法

 改正案により何が変わるかというと、従来では書面を実際に手渡しや郵送等により交付しなければならなかったのですが、この点について、申込者の承諾を得て電磁的方法により交付を可能とする提案がされています。これには関係消費者団体は猛反発しました(例えば、弁護士会の多くは、これに反対しています。)。なぜなら、特定商取引の被害者の多くはデジタルになじみのない高齢者であるところ、電磁的方法での交付を可能としたら、クーリングオフの行使が困難になるといった理由があるからです。ちなみに、改正案を見ると「電磁的方法(主務省令で定める方法を除く。)による提供は、当該申込みをした者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に当該申込みをした者に到達したものとみなす。」(改正特定商取引法第4条第3項)とあることから、おそらく電子契約書等がメールで到達した場合も該当するものと思われます。埋もれたらどうするんでしょう。


電磁的方法による交付を望まない方

 改正案によると、「当該申込みをした者の承諾を得て」提供することができることとされています(改正特商法第4条第2項)。そうすると、これによる交付を望まない方は、承諾をしなければ、電磁的方法による交付はありえないこととなります。もっとも、悪質な業者にすれば「承諾さえ得ればいいからチェックを付けさせればいいんだよ」という強硬策に出るかもしれません。この点は、関係消費者団体も懸念するところです。

 そうすると、消費者の方の対策としては、特に高齢者のご両親がいらっしゃる場合には、「業者の言いなりになってチェックとかつけてはだめだよ」という認識を一致させることが重要だと思います。さもなくば、これを知ってる方が「私がいない間は書類にチェックとかしないでね」と話し合っておくというのも有効かもしれません。

 他方、事業者の方は、承諾を得ずに、上記のような「チェックを付けさせれば」という指導及び運用をすると、改正特定商取引法第4条第1項に定める交付書面に該当しませんから、クーリングオフの起算日が確定せず、また、行政処分の対象となる場合がありますから、注意が必要です。


今国会の注目の改正案であり、現在、審議中です。改正案の動向には、要注意です。

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