暗号資産に関するトラブル|川崎市の信長行政書士事務所
金融庁広報誌5月号によると、暗号資産に関するトラブルが増えているようです(詳しくはこちらの12頁。金融庁のホームページに飛びます。)。また、令和3年4月7日に更新された「暗号資産に関するトラブルにご注意ください!」(飛び先同上)によると典型的な事例として、
・セミナーやSNS等を通じて「絶対にもうかる」等と持ち掛けられて投資をしたが、返金されない・出金できない等トラブルになっているケース
・出金するための追加費用を請求され、トラブルになっているケース
・法令に基づく登録を受けていない無登録業者(海外の事業者も含む)が国内の消費者に対して勧誘し投資をさせるが、その後業者と連絡がとれず、トラブルになっているケース
・出会い系サイトやマッチングアプリ等で知り合った人に勧められて、暗号資産の投資を進めたが、その後返金されない
・出金できない、連絡がとれない等とトラブルになっているケース情報元:金融庁「暗号資産に関するトラブルにご注意ください!」(https://www.fsa.go.jp/news/r2/virtual_currency/20210407_pdf1.pdf)
閲覧日:2021年5月16日14時17分
とされています。
まず投資をする際の大前提として、「絶対に儲かる」ということはありません。
暗号資産について
暗号資産のトラブルを防止するための知識
暗号資産は、資金決済に関する法律第2条第5項に定義されており、データであると定義づけられています(資金決済法第2条第5項第1号)。・・・という話をしても、トラブル防止にはあまり意味がないでしょう。
暗号資産のトラブルを防止するという観点から、覚えておいて損はないことをつらつらと書きたいと思います。
〇〇円儲かりました!!は簡単に捏造できる。
投資詐欺の手法として、「〇〇円儲かりました!!」と画面をスクリーンショットして、お金儲けをしたい者を誘引する方法があります。これについて、Youtubeで「【騙されないで】画面の捏造ちょろ過ぎて草」と検索すると、画面の捏造がいかに簡単であるかを解説する動画があります。2分くらいの動画なので、ご覧いただくとよいでしょう。ちなみに、私も実際に偽造文書を目にしたことがあります。実に巧妙に作られていて、一見信じてしまいそうになるほどでした。
何を言いたいかというと、勧誘をされた際には、相手から証拠として見せられる資料が偽造されている可能性があるということです。これに対しては、批判的に物事を考えるとトラブル防止に役立ちます(本当にそうか?と自問自答したり)。特に、投資詐欺については、「儲かる話を無料で教えてあげる!」といって最初は確かに無料だったものの、あれよあれよと追加料金を取られるといったものもあります。
そもそも本当に儲かるならその知識は独り占めするはずです。
綺麗な花にはとげがあるというように、うまい話には裏があることが多いです。よく物事を観察して、正しい判断ができるよう心がけましょう。
その業者が登録を受けているかを確認する方法
こちら(金融庁のホームページに飛びます。)の「暗号資産交換業者に係る情報」から、簡単に見ることができます。なぜこれを確認する必要があるかというと、登録を受けている業者は、金融庁の監督下にあることが認められるため、ざっくり言うと下手なことはできないからです。逆に言えば、無登録業者は、やりたい放題できちゃいます(もちろん違法です)。
暗号資産交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはいけません(資金決済法第63条の2)。そして、登録には資金決済法第63条の3に定めるとおり次の要件を満たす必要がありますが、無登録業者は金融庁の監督下にないため、こんな危険があります。
- 商号及び住所 ⇒ 無登録業種は金融庁の監督下にないため、急にいなくなります。
- 資本金の額 ⇒ 同上。気付いたら倒産してたりします。
- 暗号資産交換業に係る営業所の名称及び所在地 ⇒ 同上。急にいなくなります。
- 取締役及び監査役の氏名 ⇒ 同上。責任取りません。
- 外国暗号資産交換業者にあっては、国内における代表者の氏名 ⇒ 同上。責任取りません。
- 取り扱う暗号資産の名称 ⇒ 同上。存在しない暗号資産を勧誘したりします。
- 暗号資産交換業の内容及び方法 ⇒ 同上。責任取りません。
ところで、違法なんだから、なんかあったら損害賠償請求すればいいではないかと思った方もいらっしゃると思いますが、裁判するにも相手方の名称や住所などが必要であるところ、無登録業者はそもそも嘘の名称や住所を言ってきたりしますから、訴訟を起こすのも簡単ではありません。そうすると、やはり事前に被害にあわないように、よく確認し、批判的に考えることが重要だと思います。
ニュースによって価格を操作する?
ところで、金融商品取引法には、こんな条文があります。
「何人も、暗号資産の売買・・・の相場の変動を図る目的をもつて、風説を流布し・・・てはならない。」(金融商品取引法第185条の23第1項)
ここにいう「風説の流布」とは一般に、価格を意図的に変動させる目的をもって、うわさや風評を流すことをいいます。何が言いたいかというと、「こういうことしちゃだめだよ」と言うということは、こういうことする者がいるから言うんです。「つまみ食いしちゃだめだよ」というときは、つまみ食いしそうな人がいるから注意するのと同じです。
特に、暗号資産の1つであるビットコインの9割は「くじら」が保有しているとされており(詳しくは「ビットコイン くじら」で検索)、ビットコインの価格は「くじら」の発言に大きく影響を受けるといわれています。最近では、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者が、ビットコインについてツイートしたことで急落したとの報道があるくらいです(例えば、久保田博幸「イーロン・マスクに翻弄されるビットコイン、米国の規制強化を担う人物とは」(https://news.yahoo.co.jp/byline/kubotahiroyuki/20210515-00238015/)閲覧日:2021年5月16日13時43分)。もっとも、これが価格を意図して操作するために行われているか否かはわかりませんが、ビットコインは主要な人物の一言で価格が上下する性質もあるという点は、うわさ話程度に認識されるとよいと思います(確証はできませんが、一般的なビットコイン市場の慣習として成り立っているといってよいでしょう)。
そして、もう一歩踏み込むと、ビットコインの価格が瞬間的に下落すると、いわゆるロスカット連鎖も同時に発生して、あれよあれよと価格が暴落していきます。「ロスカット」という用語がわからないという方は、大資金を投じて暗号資産取引をするのは絶対にやめましょう。
まとめ
ネガティブな記述をしてきましたが、暗号資産が機関投資家に採用されつつあり(言い換えれば、銀行など信頼のある事業者にも採用されつつあり)、相場が安定してきているのではないかというポジティブな指摘なども、もちろんあります。そうすると、「暗号資産=危ない」というのは、正確ではないかもしれません。
思うに、暗号資産に関するトラブルの主な問題点を暗号資産自体に向けるのではなく、それを取り扱う人間側に焦点を当てると、トラブル予防にも役立つと思います。
暗号資産自体は、私が思う限りでは良い商品だと思います。送金スピードは従来の銀行送金とは比べ物にならないくらい速く、これは、日本でのみ生活をしていればあまりメリットではないかもしれませんが、例えば海外から日本に就業しに来て、得た賃金等を母国にいる両親に送るという場合に、メリットであると聞きます。また、国の経済危機の場合には、資産を、国に依存しない暗号資産へ転換することでその価値を保持するという使い方もあるでしょう。
暗号資産自体は一長一短であり、特にビットコインについては、その存在価値自体を否定することはもはやできなくなったと評価しています。問題は、その性質をよく知っている者が、背信的悪意をもって、自己の利益のためだけに情報弱者を勧誘し、また、情報弱者も性質を知らないまま、巨額の資金を投じてしまうという点にあるのではないかと思います。
投資は、その価値が0になっても影響がない範囲で行い、投資先も良く調べて行うのがベストです。被害にあわないように、調べられる範囲で調べてみて、それでもわからない場合には、相談するというのも1つの手であるということを、覚えておくのもよいでしょう。
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