経済産業省|2021年8月11日からの大雨災害の被災中小規模事業者対策について

query_builder 2021/08/17
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 経済産業省は、災害救助法が適用された島根県、広島県、福岡県及び佐賀県の7市4町で大雨の被害を受けた中小企業・小規模事業者対策を行うことを公表しました。

 今回は、どのような対策が講じられるかについて、まとめていきたいと思います。


<参考>

経済産業省「令和3年8月11日からの大雨による災害に関して被災中小企業・小規模事業者対策を行います」(https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210813002/20210813002.html

経済産業省「日本政策金融公庫の災害復旧貸付の概要」(https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210813002/20210813002-2.pdf

総理官邸「令和3年8月の大雨について」(https://www.kantei.go.jp/jp/headline/ooame202108/index.html

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 前線が西日本から東日本に停滞し、南から暖かく湿った空気が流れ込んだことにより前線が活発化し、特に西日本で大気の状態が非常に不安定となりました。この前線は、20日ごろにかけて本州付近に停滞する見込みであることが、2021年8月15日11時に特定災害対策本部により公表されています。

goo天気「過去の天気図 2021年8月11日9時」より引用 閲覧日:2021年8月17日


九州北部地方では11日からの降水量は同月15日までに1,000ミリを超えたところがあり、記録的な大雨となりました。また、これにより当初佐賀県、長崎県及び福岡に大雨特別警報が発令され、同月8月13日11時30分に、大雨特定災害対策本部が設置されました。

 同月15日11時時点では、広島県、福岡県、佐賀県及び長崎県に発表されていた大雨特別警報は大雨警報等に切り替えられています。なお、被害状況等は次のとおりです。


内閣府「令和3年8月の大雨による被害状況等について」(2021年8月15日11時00分現在 特定災害対策本部公表)より引用

被災中小企業・小規模事業者に対する対策について

特別相談窓口の設置

   特別相談窓口が設置された機関


 島根県、広島県、福岡県及び佐賀県にある次の機関に特別相談窓口が設置されます。これは特に被災された中小企業・小規模事業者の資金繰りに関する相談に特化したものであると整理することができます。例えば、被災により店舗等が損傷したことによるローンの資金繰りなどが考えられるでしょう。


  • 日本政策金融公庫
  • 商工組合中央金庫
  • 信用保証協会
  • 商工会議所
  • 商工会連合会
  • 中小企業団体中央会
  • よろず支援拠点
  • 全国商店街振興組合連合会
  • 中小企業基盤整備機構中国本部・九州本部
  • 中国経済産業局・九州経済産業局

災害復旧貸付の実施

   日本政策金融公庫の災害復旧貸付概要


 特別相談窓口が設置された機関のうち、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫が、運転資金や設備資金を融資する災害復旧貸付を実施します。

 日本政策金融公庫の災害復旧貸付の概要は、次のとおりです。


【金利】(2021年8月2日現在、貸付期間5年の場合)

中小企業事業 ⇒ 基準利率1.11%

国民生活事業 ⇒ 基準利率(災害貸付)1.26%


【貸付限度額】

中小企業事業 ⇒ 別枠で1億5,000万円

国民生活事業 ⇒ 各貸付制度の限度額に上乗せ3,000万円


【貸付期間】(据置期間2年以内)

中小企業事業 ⇒ 設備15年以内・運転10年以内

国民生活事業 ⇒ 適用する各貸付制度の貸付期間に準ずる(※一般貸し付けを適用した場合は10年以内)

セーフティネット保証4号の適用

   セーフティネット保証4号の概要


 大雨の影響により売上高等が減少している中小企業・小規模事業者を対象に、信用保証協会が一般保証とは別枠の限度額で融資額の100%を保証するセーフティネット保証4号を適用します。

 セーフティネット保証とは、中小企業信用保険法2条第6項に基づき認定を受けた中小企業者に対して行われる保証であり、一般に危機関連保証といわれています。昨今では、コロナウィルスの流行に伴い適用されたこともある制度です。そして、セーフティネット保証4号とは、噴火、地震、台風等による突発的な自然災害等により、経営に支障をきたしている中小企業者への資金供給の円滑化を目的として、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で保証を行う制度です。

   対象となる中小企業者


 対象となる中小企業者は、次のとおりです。


  1. 指定地域(今回は島根県、広島県、福岡県及び佐賀県の7市4町)において1年以上継続して事業を行っていること。
  2. 今般の大雨によって災害の影響を受けた後、売上高等について、直近1か月が前年同月比20%減少しており、かつ、その後2か月を含む3か月間で前年同期比20%減少することが見込まれること。

 

 一見複雑に見えますがつまり、売上高が、前年同期比で20%減少するというのが重要な点です。

   セーフティネット4号の保証内容及び手続方法


 補償内容について、対象資金は経営安定資金です。保証割合は100%保証、補償限度の上限額は無担保8,000万円で普通2億円です。また、第三者保証人は原則不要です。

 手続きの方法については、対象となる中小企業者は、


  1. 本店等所在地の市区町村の商工担当課等の窓口に認定申請書を提出し、
  2. 認定を受け、
  3. 希望の金融機関または所在地の信用保証協会に認定書を持参のうえ、保証付き融資を申し込む


となります。

(中小企業庁「セーフティネット保証制度(4号:突発的災害(自然災害等))-手続きの流れ」)

小規模企業共済災害時貸付の適用

   小規模企業共済災害時貸付の概要


 大雨により被災された小規模企業共済契約者に対して、中小企業基盤整備機構が即日で低利で融資を行う災害時貸付が適用されます。

   小規模企業共済災害時貸付の貸付対象者


 貸付の対象となる者は、次のとおりです。

  1. 小規模企業共済制度へ加入後、4月末日及び10月末日(これを「貸付資格判定時期」といいます。)までに、12ヶ月以上の掛け金を納付している共済契約者であること。
  2. 島根県、広島県、福岡県及び佐賀県の7市4町に事業所を有し、かつ、主要な資産が全壊、流失、半壊、床上浸水などの損害を受けているか、又は前年同月比の売上高の現象が見込まれること。


 小規模企業共済の貸付制度は、掛金納付期間が1年を超えていないと融資を受けられない点に注意が必要です。

   小規模企業共済災害時貸付の貸付条件


 貸付条件は、次のとおりです。


  1. 限度額:納付済掛金×納付月数×70%~90% or 1,000万円のいずれか少ない額
  2. 貸付利率:年0.9%(令和3年8月16日現在)
  3. 貸付期間:貸付金額500万円以下 36か月
  4.          505万円以上 60か月
  5. 償還方法:6か月ごとの元金均等割賦償還
  6. 担保・保証人:不要
  7. 借入れ窓口:商工組合中央金庫本店及び支店

   小規模企業共済災害時貸付の即日貸付の条件


 以下の資料が整っていれば、原則として即日貸付が可能とされています。


  1. り災若しくは被災証明書又は商工会等から確認を受けた被災証明願
  2. 独立行政法人中小企業基盤整備機構からの通知物(共済契約者の氏名及び契約者番号がわかるもの。)
  3. 実印、印鑑証明(3か月以内発行のもの。)
  4. 本人確認書類
  5. 収入印紙


 ただし、借入窓口を商工中金以外に登録している場合には、借入窓口の変更手続が必要なため、即日貸付はなされない点に注意が必要です。

災害時の政府の対応に関するまとめ

   まとめ


 今回は以上までに、災害救助法が適用された島根県、広島県、福岡県及び佐賀県の7市4町で大雨の被害を受けた中小企業・小規模事業者への経済産業省の取り組みをまとめました。

 このように、災害発生時には政府が特別本部を設置して、様々な支援活動を行うことがあります。災害があった場合には、制度を活用することで、企業を存続させることも可能となります。今回の大雨は日本全体で引き起こされていますから、今は重大な災害に至っていない地域の方々につきましても、事前に、このように政府が支援を行うことがあるということをぜひご認識いただければと存じます。そうすることにより、いざというときに第一歩が早く踏み出すことができます。

 また、行政手続の専門家である行政書士としては、これら行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することが目的であります。行政手続でご不明な点がありましたら、川崎市にある信長行政書士事務所ですが、遠方からもお問い合わせいただくことが可能です。現代ではオンラインやリモートもありますから、一般的な制度などもご説明が可能ですし、オンライン申請がある行政手続き場合には遠方からも手続が可能です。おそらく、事務所の名前をお忘れになることはないでしょうし、そのような目的で信長行政書士事務所を屋号としていますから、お困りの場合にはぜひご相談ください。着物の信長と覚えていれば、いざというときに役立つかもしれません。

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