死後事務委任契約について

query_builder 2021/09/03
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 コロナウィルスが猛威を振るっており、一人暮らしの方が残念なことに助からないという事案も増えているようです。私自身も、備えをしておかなければならないなということで、自身の遺言書の起案をしましたが、やはりなかなか身辺整理を含め難しいものがありますね。

 何に悩んでいるかというと、死後の契約の解除等をどうするかという点です。特に、行政書士として継続的契約を結んでいることから、これをなるべく死亡時から遅滞なく解約したいというのがあります。そこで、「死後事務委任契約」の検討に入るわけですが、この「死後事務委任契約」は発展途上中の終活のひとつです。今回は、終活代表である遺言と、最近注目を集めている死後事務委任契約について触れていきたいと思います。

遺言書について

遺言書の作成



 いわゆる終活の際に検討するのは、遺言書の作成でしょう。自筆証書遺言は誰でも自由に書けます。最近では丁寧に法務省が様式例を作ってくれています。



法務省「03 遺言書の様式等についての注意事項」(https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html)より引用



 さて、遺言書では法定遺言事項といって、概ね次の事項を、法的効力を伴った状態で残すことができます。


-法定遺言事項-

1.狭義の相続に関する事項

(1)推定相続人の廃除・その取消し(民§893)

(2)相続分の指定・指定の委託(民§902)

(3)遺産分割方法の指定・指定の委託(民§908)

(4)遺産分割の禁止(民§908)

(5)共同相続人の担保責任の減免・加重(民§914)

(6)遺留分侵害額負担割合の指定(民§1047①二)

2.遺産の処分に関する事項

(7)遺贈(民§964)

(8)財団法人の設立(一般法人法§152②)

(9)信託の設定(信託法§3二)

3.身分上の事項

(10)認知(民§781)

(11)未成年後見人の指定(民§839①)

(12)未成年後見監督人の指定(民§848)

4.遺言の執行に関する事項

(13)遺言執行者の指定・指定の委託(民§1006)


これらの書き方も、注意が必要です。例えば、(7)遺贈(民§964)は、財産を特定して遺贈(例えば、特定の土地をあげる場合)するのか、包括して遺贈(例えば、3分の1をあげる場合)するのかによって、受遺者の取り扱いが異なります。すなわち、包括受遺者(例に沿えば3分の1を受けた者)は、相続人と同一の権利義務を有します(民§990)から、これを断る場合には家庭裁判所へ相続放棄の申述をしなければなりません(民§938)。

 なお、これ以外の事項を付言事項といいます。この付言事項は後ほど触れる死後事務委任契約と密接に関係します。

 ほかにも色々と複雑なことがありますので、弁護士、司法書士や行政書士などの専門家へ相談されるとよいでしょう。このとき、それぞれの先生方で得意とする手法が異なるように感じます。したがって、セカンドオピニオン、サードオピニオンなど、複数の先生方にご相談し、一番相性のいい先生にお願いするとよいです。無料相談などをうまく活用しましょう。

遺留分侵害額について



 遺留分侵害額請求についても、ご相談が多いです。昔は遺留分減殺請求と言われていました。遺留分侵害額とは、兄弟姉妹以外の相続人、つまり死亡者の配偶者、子、直系尊属(一般的には両親です。)が、請求すれば絶対にもらえる金銭です(民§1042)。請求すればと言ったのは、遺留分侵害額の請求には期間の制限があるからです。すなわち、遺留分侵害額の請求権は、請求権者が、相続の開始・遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。相続開始の時から10年を経過したときも、同様です(民§1048)。


 よくある相談として、「妻に全部を与えると書いても、遺留分とやらがあるんでしょう?」というのがあります。ご指摘のとおりですが、上述のとおり遺留分は請求すれば絶対にもらえるものですから、逆に言えば請求がなければ全部あげられます。そこで、ご相談される際には先生によって得意な手法があるという注意点が出てきます。このような場合でも「全部与えると書きましょう!」という先生もいれば、「もしかしたら紛争になるから考え直そう」という方もいらっしゃったり、はたまた「ちょっとお金あげて遺留分の事前放棄(民§1049)をしてもらいませんか?」という先生もいらっしゃるようです。

 ですので、複数の先生方にご相談されて、肌に合う方を選ぶのがよいと思う次第です。

死後事務委任契約とは

死後事務委任契約について



 さて、遺言書には法定遺言事項があると述べました。そしてもう一つ、付言事項があります。付言事項には法的効力はないとされていますが、しかし、遺言を残した経緯(みんなで争いなく相続してほしい旨など)や感謝の気持ち(いままでありがとう。今後も家族仲良くすることを願う。など。)を伝えることで、遺言を実行してもらう際に強い影響力があると述べる学者の論文もあります。


 付言事項にはこのほかに、借りてるアパートの契約の解除とか、埋葬の実施などが当たります。これは、遺言に残しても差し支えはありませんが、法的義務はないとされています。そうすると、このようなものについて、どのように死者の意思を反映させるかが問題となります。

 そこで近年、最高裁として初めて死後事務委任契約を認めた最判平成4年9月22日(金法1358号55頁)を皮切りに、成年後見人の事務とも相まって「死後事務委任契約」が注目を集めています。

 死後事務委任契約とは文字通り、死後の事務を委任する契約です。最近ですと横須賀市が「エンディングプラン・サポート事業」を行い、こちらも注目を集めています。

死後事務委任契約に関する判例



 先ほどの最高裁までいった事件では、死亡者Aが生前に、①病院への費用の支払い、②葬儀と法要の施行と費用の支払い、③入院中世話になった家政婦と友人への謝礼金の支払いについて、死後にこれを行ってくれという委任契約をYと結びました。Aが死亡した後、Yは契約通りにこれを行いましたが、Aの相続人Xが、Yの行為は不法行為であるとして、損害賠償請求を行いました。



 さて、何が問題となったのでしょう。それは、①「委任は、委任者の死亡によって終了する。」とする民法653条によって死後事務委任契約は終了している、②委任契約が仮に有効だったとしても死亡者の死亡により契約を相続するから「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」(民§651①)、③遺言制度を潜脱している、という3点です。

 最高裁はこれらの諸問題について(③については触れていないようですが)問題ないとして、死後委任契約を有効としました。

死後委任契約を作成するときは



 死後委任契約を作成するときは、上で述べたように様々な法的問題がありますから、弁護士などの専門家に相談されるとよいでしょう。できれば、遺言書を作成されるときの相談と同時にすると、話がスムーズにいくと思います。こんな方法もあるんだという程度に、死後事務委任契約についてもご認識いただいていると、よいかもしれません。


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