消費者庁が公表した検討会の報告書について

query_builder 2021/09/14
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 9月10日に、消費者庁は、消費者契約に関する検討会の報告書を公表しました。時代に沿って改訂を重ねる必要がある消費者契約について、どのような検討がなされたのか見てみます。


<参考>

消費者庁「消費者契約に関する検討会の報告書」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/meeting_materials/assets/consumer_system_cms101_210910_01.pdf)2021年9月10日公表

消費者契約に関する検討会の報告書

冒頭


 報告書の冒頭では、消費者契約法は、社会経済情勢の変化に対応し得るものであることが求められており、消費者が安全・安心に契約を締結できる社会環境を確保することが必要である旨が述べられています。そして消費者庁には、早急に法制的な検討に着手することが期待されていると宣言しています。

 また、昨今では超高齢社会がますます進展していることや、コロナ禍による新たな日常と相まって急激に変化が生じていることも述べています。そこで、法改正などに当たっては、次のような消費者の脆弱性を考慮することが欠かせないとしています。


  • 消費者の属性(例えば年齢など)に基づく脆弱性
  • 属性を問わない一時的な脆弱性(例えば強迫や威迫、居座りによる勧誘など)
  • 消費者の有する合理性には限界がある。
  • 消費者の思考は、①直感的で便宜的な思考と、②論理的な思考があるとする理論


 これを見る限りでは、平成28年、平成30年と改正されてきた消費者契約法は、近い将来、再び改正されることが予想されます。

 


消費者の取消権について


 今回の検討会が行われた経緯は、超高齢化社会の進展と、若年者の消費者被害の多様化が基礎にあるとしています。平成30年の法改正等によって、消費者が合理的な判断をすることができ ない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における取消権の創設について検討を行い必要な措置を講ずることとされました。これにより消費者契約法第4条3項で8種類の事業者の行為が取消しの対象となりました。


 しかしながら、これらの規定をもってしても、いわゆる脱法行為によって消費者が被害を受けてしまうことがありますから、今後の法改正によって脱法防止規定を定めようということが検討されています。もっとも、これをどのように定めるかについては非常に困難であり、なお検討を要することとなるでしょう。

消費者の心理状態に着目した規定



 問題の所在として報告書で取り上げられている典型的な消費者被害の一つとして、事業者が、自分にとって都合の良い、消 費者にとっては不要な商品やサービスを購入させることがあることが指摘されています。これを社会心理学の知見によると、悪質な事業者は、次の3点に働きかけるといわれています。すなわち、次の3点です。



  1. 認知(あたま)
  2. 感情(こころ)
  3. 身体(からだ)


 これに働きかけ、消費者に慎重な検討(熟慮)をさせないよう仕向け、消費者を直感的で便宜的な思考(ヒューリスティックな判断)に誘導していると分析されています。具体的な手法としては、


  1. 消費者の検討時間を制限して焦らせる。
  2. 広告とは異なる内容の勧誘を行って不意を突く。
  3. 長時間の勧誘により疲弊させる。


 が挙げられており、これらをどのように規制するのかが検討の対象となっています。

消費者の判断力に着目した規定


 心理状態に着目した規定改訂によっても、そもそも判断力が劣っている方を救済することは困難です。消費者被害には、自宅を売却して住むところを失うなどの被害も生じていることが、報告書で挙げられています。

 これについては、民法上の保佐制度に記載されている行為について、判断力が著しく低下した者については、取り消すことができるとするのはどうかという見当がなされていますが、一定の方向性を示すことは難しいのではという意見も出されています。

 この点について私見では、悪徳ではない事業者の活動を過度に制限することにつながらないように配慮する必要があると考えますが、そもそもその線引きは極めて難しいといえるでしょう。今後の動向に注目です。

小括

まとめ

 検討会の報告書には、消費者契約法上の消費者の取消権、「平均的な損害」について、不当条項等について、消費者契約の条項の開示について、消費者契約の内容に係る情報提供努力義務についてという点が検討されています。

 今回は、消費者の取消権について取り上げましたが、小括すると要するに、一義的に線引きをするのは難しいという点に決着しているものと思われます。

 

 消費活動には、悪徳業者もいればそうではない業者もいるのであり、法規制によって、悪徳ではない業者の正常な活動を委縮させることは避けなければなりません。ただでさえ、そのような事業者は正常な活動故に、悪徳業者よりも利益に乏しい業者も少なくないからです。


 そうすると、法規制がそのような事業者を追い込むことは望ましくありません。


 消費者の取消権については、今後の動きにも十分注意が必要ですが、この点についていえば法改正は極めて困難であるのではないかと考える次第です。

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