消費者庁が公表した検討会の報告書について②
前回のブログでは、消費者契約に関する検討会の報告書の第1の部分である「消費者の取消権について」を紹介しました。今回は第2の部分である「平均的な損害」について紹介します。
「平均的な損害」について
消費者契約法第9条1号
消費者契約法(平成12年法律第61号)は、次に定める条項であって、これらを合算した額が、事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分については、無効とすると定めています(法第9条1号)。
- 損害賠償の額の予定
- 違約金
これには例えば、結婚式場のキャンセル料とか、ビジネスホテルのキャンセル料とかが当たります。例えば、300日前にキャンセルしたのに全額お支払いくださいというのは、本条に抵触し無効となる場合があります。
しかしながらここで問題となってきたのは、「平均的な損害」についてです。
消費者には「この損害の額が、事業者の平均的な損害を超えるか否か」について、ほとんどその情報がなく、したがって、「御社の平均的な損害は●●円だから、それを超える××円の部分は無効である。」という主張立証が極めて困難であるという点でした。ここが困難であると、やはり裁判で争いになったり、泣き寝入りをせざるを得ない消費者がいるということが、消費者契約法上大きな問題となっています。
「平均的な損害」の考慮要素の列挙
消費者契約法第9条1号は、「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」について、当該超える部分を無効としています。
ここでは、「平均的な損害」がなんなのかについては、一切触れられていません。そこで検討会では、平均的な損害を算定する際の考慮要素として、当該消費者契約における商品、権利、役務等の対価、解除の時期、当該消費者契約の性質、当該消費者契約の代替可能性、費用の回復可能性などを列挙し、もって「平均的な損害」の明確化を図ることが考えられています。
解約時の説明に関する努力義務の導入
また、違約金については、金額が明記されていても、解除の際に不当に高額なのではないかと思ってしまうこと、すなわち、違約金額が妥当なものであることについて事業者から十分な説明がないために紛争に発展している側面があるという指摘がなされています。
そうであるならば、やはりその説明の義務を課すことが望ましいでしょう。しかし、検討会ではこの義務を努力義務、すなわち、なるべく説明するようにしなさいねというにとどめています。もっとも、努力義務ではなく法的義務にすべきだという意見もあり、このあたりについても今後、法改正に向けて具体的に検討が重ねられることと思われます。
立証責任軽減特措の導入
ところで、平均的な損害については、その立証責任の転換も有効であると考えられています。すなわち、特許法第104条の2の規定などを参考にして、事業者が、消費者の主張する平均的な損害の額を否認するときは、その否認に当たって、事業者自らが主張する平均的な損害の額とその算定根拠を明らかにしなければならないとする規定を設けるべきというのです。
しかしこれには、その算定根拠に、営業秘密が含まれている可能性があり、これを明らかにするくらいなら・・・と、今度は逆に事業者が泣き寝入りすることも、心配されています。
今後の検討課題とまとめ
今後は、文書提出命令の特則・「平均的な損害」の額の立証責任の転換等について、特則の運用実態を踏まえ、負担の軽減が不十分であると判明した場合に検討することとしています。また、違約金の策定や相当性判断の基準とすることの当否についても問題提起がされており、これに対する具体的な検討もなされることでしょう。
消費者契約法の改正には、適切な事業運営を行っている事業者にも一定程度影響を及ぼしますから、その改正に当たっては、多方面への十分な配慮が求められることと思います。
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