消費者庁が公表した検討会の報告書について④
前回のブログに引き続き、消費者契約に関する検討会の第四弾です。第四弾では、消費者からの情報開示請求に対する事業者の努力義務についてです。
消費者と事業者との間には、情報の質、量、交渉力に格差があるとされています。そのため、法律として、消費者契約法を作り、そのような格差による被害を防ごうとしているのです。
しかし、強すぎる法規制は、正常な事業活動をしている事業者にも過大な負担を課すことになりますので、法改正の際にも、多方面への十分な配慮は不可欠となるのです。
消費者契約の条項の開示について
消費者側の不足する情報を満たすために
契約に先立ち、消費者がその契約内容などを知る機会を提供することは、事業者に求められる最低限の義務ではないかという議論がなされており、事業者による契約条項の開示の在り方についての検討が求められています。
今後、この検討内容によっては、例えば、定型約款を見やすい場所に設置することが求められたり、消費者から請求があった場合にはこれに応じるなどといった対応が求められるケースも出てくるかもしれません。
検討会の報告書では、適格消費者団体の契約条項の開示請求について、議論がなされています。
適格消費者団体の契約条項の開示請求について
適格消費者団体とは、事業者が、不特定かつ多数の消費者との間で不当条項を使用しているとき、その事業者に対して差止請求権を行使することができる団体です(消契法§12③)。
わかりやすく言えば、契約約款に消費者に不利な条項がある場合に、適格消費者団体によって差止請求権の行使すなわち契約約款の差し替えを求められたりします。(具体的な例としてはこちら。消費者庁のホームページに飛びます。)
ところで、適格消費者団体は、消費者から提供される情報に基づいて差止請求権を行使しますが、その情報が古いものであることもあります。
そうすると、適格消費者団体は、最新の契約条項の開示を求めた上で、差止請求権を行使しようとしますが、事業者がその開示に応じないことがあり、問題となっています。
そこで、事業者がそのような場合に、最新の契約条項の開示に応じるべきとする規定を定めるべきではないかということが検討されています。
その他の事項について
このほかに、消費者契約の内容について情報提供をすべきとする努力義務がありますが、これについて検討がなされています。
すなわち、事業者は、勧誘に際し、消費者の理解を深めるために、消費者契約の内容について必要な情報を提供するよう努めなければならないという努力義務があります(消契法§3①二)。
そして、近年ますます取引が複雑・多様化しており、この努力義務の必要性が再度認識されています。
これをより実効的なものにするために、消費者の年齢や生活の状況、財産なども考慮して行うよう検討すべきことが求められています。
まとめ
消費者契約に関する検討会の報告書については、ブログで4回にわたり取り上げました。消費者契約法は、事業活動を行うほぼすべての事業者に適用される法律であって、これが改正されると事業者は対応に迫られます。
ただでさえ、人手不足や能力不足が問題とされる事業者が多い中、このように目まぐるしく対応が必要となれば、負担はますます大きくなるでしょう。
今回を振り返ると、可能性としては、
- 消費者の取消権の種類が増えることによる対応
- 平均的な損害の立証責任の転嫁
- サルベージ条項等の不当条項の改訂
- 契約約款の改訂や適格消費者団体への対応
などがあるでしょう。
消費者被害は、あるべきではなく、これを防止するために法改正が求められるのは必要だと考えます。他方、事業者にとっては負担が課されることになり、そのしわ寄せは現場レベルで降りてきます。
もし、事業活動において、人手不足などの理由から正社員を採用するほどでもないけれど、プロフェッショナルが欲しいというのであれば、ぜひ専門家へご相談されることをお勧めします。
もちろん、信長行政書士事務所でも、ご相談を承っていますので、お気軽にご相談ください。
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