対日相互審査報告書の概要について

query_builder 2021/09/28
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 2021年8月、金融庁のホームページで、対日相互審査報告書の概要が公表されました。いわゆる、FATFの対日審査と称されるものの報告書です。


 これは、2019年10月29日から同年11月15日時点で、日本で実施されているマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の措置をまとめたものであり、日本においてどのようにこれを強化できるかについての勧告を提供するものとされています。

対日相互審査について

そもそもマネー・ローンダリングとは


 そもそも、マネー・ローンダリングとは何でしょうか。マネー・ローンダリングは、犯罪で得た収益の出所を隠ぺいするために行われるものであり、資金洗浄とも呼ばれています。説明よりも具体例をご覧いただいた方が、ピンとくると思います。

 

 これについて、とても分かりやすくマネー・ローンダリングを説明しているサイトがありますので、引用させていただきましょう。


Techfirm Blog「3分でわかるマネーロンダリング〜公認アンチマネロンスペシャリストが解説〜」2019年7月8日公表(https://www.techfirm.co.jp/blog/what-is-money-laundering)より引用


 このように、麻薬取引や強盗などの犯罪で得た資金を、通常の消費活動に繰り返し使うことによって、お金の出所を隠ぺいすることができます。


 お金の出所を隠ぺいすることによって、犯罪者からすれば、口座凍結、差し押さえ、摘発、徴税などから逃れることができます。例えば、マネー・ローンダリングを行わずに犯罪で得たお金を使ったことがきっかけで、犯罪者が検挙されることもあるそうです。マネー・ローンダリングは、このようなことから免れるために行われます。


前掲Techfirm Blog(https://www.techfirm.co.jp/blog/what-is-money-laundering)より引用


 金融機関であれば、CASE3の対策を、金融庁などから強く求められています。なぜなら、口座間で繰り返し入出金されてしまうと、お金の出所が分かりにくくなるからです。


 ところで口座は高く売れるそうです。例えば、友人から「名前だけ貸してくれない?」と頼まれて、免許証をコピーされたりしたら、それはマネー・ローンダリングに使われるものかもしれません。


 これは、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号。以下「犯収法」といいます。)第28条によって、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金(両方科せられることもあり。)に処されます。


 同条1項は口座を実際に悪用した者、同条2項は口座を悪用するために情報を提供した者を処罰します。ですので、「名前だけ貸してくれない?」と言われて、それがマネー・ローンダリングに使われるかもしれないと思ったら、絶対に貸さないようにしましょう。

FATFの起源について


 マネーローンダリングについて述べましたが、これを断固として許さないとするのが、FATF(金融活動作業部会のこと。以下「FATF」といいます。)です。これは、マネー・ローンダリング対策を国際的に協調・推進するために、1989年のG7アルシュ・サミットにおいて設立された政府間会合であり、OECD(経済能力開発機構)内に事務局が置かれています。


 ちなみに、OECDは最近では持続可能な開発(いわゆるSDGs)についても、加盟国間の分析や検討を行っています。


 さて、1989年7月16日に行われたアルシュサミットの経済宣言では、麻薬問題に触れられています。麻薬問題については、冒頭で次のように述べられています。


52.麻薬問題は、危機的なまでの状況に達した。我々は、国内的及び国際的に断固たる行動をとる緊急の必要性を強調する。我々は、全ての国、特に麻薬の生産、取引き及び消費の多い国に対して、麻薬生産に反対し、需要を削減し、更に麻薬取引自体及びその利益の洗浄に対する闘いを進めている我々の努力に加わるよう要請する。外務省「15 アルシュサミット」1989年7月16日公表(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/arch89/j15_a.html)より引用


 そして、最後に、金融活動作業グループを招集することを述べています。


サミット参加国及びこれらの問題に関心を有するその他の諸国からなる金融活動作業グループを招集すること。その権能は、銀行制度と金融機関を資金の洗浄のために利用することを防止するために既にとられた協力の成果を評価すること、及び多数国間の司法面での協力を強化するための法令制度の適合等のこの分野における追加的予防努力を検討することである。この作業グループの第1回会合はフランスにより招集され、その報告は1990年4月までに完成される。前掲外務省より引用

 

 その権限は、


  1. 銀行制度と金融機関を資金の洗浄のために利用することを防止するために既にとられた協力の成果を評価すること。
  2. 多数国間の司法面(立法等のことと思われる。)での協力を強化するための法令制度の適合等のこの分野における追加的予防努力を検討すること。


 とされています。


 今回のFATFによる対日審査でも、優先して取り組むべき行動のd)において、「マネロン罪の法定刑の上限を、少なくとも日本で犯罪収益を最も頻繁に生み出す重大な前提犯罪と同水準に引き上げる。」などと報告されています。


 国際的なものとはいえ、一つの部会が、一国の法制度に対して検討を要請することができるという権限は、非常に強力なものといえるでしょう。


 このように、FATFは1989年に設立された政府間会合であり、非常に強力な権限を持って、一定の期間で相互に国の取り組みを評価しています。


主な評価結果


 今回の評価結果は、a)~j)の10項目で評価されています。かなりの量がありますが要約すると、金融監督当局間(金融庁、警察庁などでの間のことと思われます。)でリスクの理解に差はあるものの、その理解は適切であること、また、金融インテリジェンス情報(国家安全保障のために金融に特化した組織により、金融の手法により要求・収 集・分析され、金融の観点で政策決定者に提供される知能のこと。)や関連情報は、金融機関に広く作成されているということが述べられています。

まとめ


 今回はマネー・ローンダリングとFATFの起源に触れ、対日審査の概略について取り上げました。次回は、主な10項目の評価結果について、取り上げていきたいと思います。


 FATFの対日審査は、金融機関に限った話ではなく、特定事業者全般に及びます。例えば、我々行政書士も、その一つです。犯収法は、金融機関での経験がなければあまり意識されることはありませんが、国全体として取り組みがなされており、取引時の本人確認など、事業者にとっても振れる場面が多いです。


 また、FATFの対日審査の報告があり、金融機関以外の特定事業者ではその意識が足りていない旨の報告がありますから、これらを改めて強く認識することが、今後求められるかもしれません。

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