対日相互審査報告書の概要について③

query_builder 2021/10/05
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さて、前回のブログでは、FATFの対日相互審査報告書で挙げられた主な評価結果のうち、a)~e)について触れてきました。今回は、f)~j)について触れていこうと思います。


<参考>

金融庁「対日相互審査報告書の概要(仮訳・未定稿)」(https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/convention/fatf/20210830.pdf

f)法執行機関への苦言


 薬物の違法取引の大規模な事件捜査には、問題があると指摘されています。すなわち、起訴された事案はすべて有罪判決が下っているが、起訴自体が、ある程度にしかできていないという指摘です。また、法定刑も軽いとされており、そのほとんどが執行猶予判決や罰金刑にとどまっていることが示されています。


 薬物の違法取引については、よく、薬物を使用している本人が自らの責任で使用しているのみであって、ほかの人に迷惑をかけていないからいいではないかという主張がされる場合があります。


 しかし、それは違います。なぜなら、その薬物を購入した資金は、戦争や犯罪に使われるからです。薬物の違法取引の根絶を目指す理由は、1つのみではないということは、覚えておいて損はないと思います。


 特に、未成年者を監護する立場の方は、ほかの人に迷惑をかけていないのだからという未成年の主張に対して反論する場合には、マネー・ローンダリングも根拠として反論する方法がありますので、ご留意いただくのもいいかもしれません。


 また、このような指摘を受け、立法で何らかの動きがあるかもしれません。例えば、法定刑を引き上げるとかが考えられます。そもそも法を犯さない方にとっては、この点はあまり影響がないかもしれませんが、社会の動きとしては注目に値します。

g)犯罪に使われたものは没収せよ


 犯罪に使用された道具の没収について、短く触れられています。先ほど触れたように、そもそも起訴猶予などによって起訴自体がある程度しかできていないということも関係して、犯罪に使われたであろう道具を没収できているかということが投げかけられています。


 しかしながら、日本において財産権は不可侵とされ、財産権の内容は法律で定めることとされています(憲法§29①②)。これを受け没収の規定自体はある(刑法§19)ものの、その没収も(拘留又は科料のみに当たる罪についてですが)制限が課されています(刑法§20)。

 日本においては、財産権の侵害に対しては消極的であるといえるでしょう。そうすると、国際的にこれを積極的に行うべきであると指摘された場合に、どのように対応するのかは、社会的に見て注目に値します。


 実際にはもっと複雑な事柄が絡み合ってますので、単的に結論には至りませんが、色々な制約がある中での指摘にどのように対応するのかが気になります。

h)日本は国際協力ができている


 日本の国際協力について、短く述べられています。犯罪人の引渡しができているとかです。ここで少し面白いのが、「日本は、・・・、同等の価値を持つ財産を国内で没収するための支援を他国に行っている。」という点です。先ほど述べたように、日本における犯罪に対しての没収は謙抑的であることが指摘されている一方で、他国からの要請については没収するための支援を行っているというのです。


 そうすると、やはり日本において財産権に対する考え方をどのように整理するかが問題となるでしょう。

i)NPOが巻き込まれる可能性がある


 日本は、リスクのある非営利団体(以下「NPO」といいます。)についての理解が十分ではないことが指摘されています。もっとも仮訳であるため、その表現はちょっとわかりにくいところがあります。


 この記載からは、「(マネー・ローンダリングを行う)リスクのあるNPO」なのか「(マネー・ローンダリングの被害にあう)リスクのあるNPO」なのかが読み取れませんが、同報告書の7頁の20.を読むとわかります。「日本では、NPO 等セクターに関するテロ資金供与リスクについての理解が十分ではなく、テロ資金供与に悪用されるリスクがある一部のNPO 等に対し、リスクに基づいた具体的措置を講じていない。」ということを言いたいようです。


 NPOについてかなり高度の注意喚起がなされています。また、日本の当局はNPOに対してガイダンスを早急に強化する必要があると述べています。


 これによって、NPOに対する動きが活発化し、ゆくゆくはマネー・ローンダリングの対策が義務付けられるなどの措置があるかもしれません。

j)金融制裁の対象者の指定の改善


 北朝鮮による大量破壊兵器の拡散を対象とした措置が引き締まってきているという点を評価するとともに、監督当局による暗号資産交換業者、職業専門家等に対するスクリーニングを効果的に行うべき旨の記載がなされています。


 また、国家的にこれらに対する対策の実施がなされているということが単的に述べられています。

小括


 前回のブログとあわせて10点の評価の要約を述べてきましたが、要するに、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策についてもっとやれよということだと理解しています。


 また、中小企業や個人事業主の立場から考えると、例えば、地方銀行から初めて融資を受けることを考えたときに、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策を講じているかという点は、融資の審査で厳しく見られるようになるのではと考えています。


 さらに、中小企業や個人事業主にとってもそのような対策を具体的に講じなければならないとする法改正などもあり得ますから、「金融業界だけの話でしょう」という話でもなさそうです。


 今後、どのような体制が講じられ、それによってどのような影響があるのかについては、中小企業や個人事業主としても注視していかなければならないと思います。

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