対日相互審査報告書の概要について⑤
前回のブログまでに、対日相互審査の報告書の概要に触れてきました。これを受けて日本としてこれから予定されていることにも触れていこうと思います。
対日相互審査についての財務大臣談話
日本のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の自己評価
財務大臣は、次のように述べています。
報告書では、日本につきまして、国際協力等の分野で良い結果を示しているとされ、マネロン・テロ資金供与対策の成果が上がっているとして、「重点フォローアップ国」との結論になりました。同時に、日本の対策を一層向上させるため、金融機関等に対する監督や、マネロン・テロ資金供与に係る捜査・訴追等に優先的に取り組むべきとされました。
今般、報告書の公表を契機として、政府一体となって強力に対策を進めるべく、警察庁・財務省を共同議長とする「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」を設置するとともに、今後3年間の行動計画を策定しました。今後、行動計画を踏まえ、取組の進捗を定期的にフォローアップしていきます。
引き続き、国民の皆様のご理解とご協力を頂きながら、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に取り組み、安全・安心な暮らしを実現するとともに、ポストコロナの持続的な経済成長に貢献してまいります。財務相「FATF対日相互審査についての財務大臣談話」(https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/convention/fatf/fatfhoudou_20210830_2.html)
まず、日本についてマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の成果が上がっていると評価しています。新聞では「不合格」という点が強調されていますが、冷静に内容を見てみるとそこまで酷評ではないと思います。
そして今後は、金融機関等に対する監督について優先的に取り組むべきという報告を取り上げているため、やはり地銀などにその影響が及ぶと考えるべきでしょう。これにより、中小企業や個人事業主の方への融資の審査にも影響が及ぶかもしれません。
さらに、「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」を設置すること及び今後3年間の行動計画を策定しています。
マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関する行動計画
金融機関について
金融機関については、概ね令和6年までに、次のことを完了することを予定しています。
- 取引モニタリングの強化
- 継続的顧客管理 などリスクベースでのマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の強化
- 取引時確認、顧客管理の強化および平準化
- 取引スクリーニング、 取引モニタリングの共同システムの実用化
- 政府広報を活用 した国民の理解の促進
これらは、金融庁が公表する「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」に基づき進められることと思います。こちらも随時改訂されますから、十分注意が必要です。
最近では、経営陣の積極的関与の改訂がありましたし、今後もさらに増えることでしょう。
職業専門家等について
職業専門家等については、次のことが求められます。
- マネロン・テロ資金供与対策に関する監督ガイドラインの更新・策定
- 適切な監督態勢の整備
- リスクベースでの検査監督の強化
- マネロン・テロ資金供与対策義務に関する周知徹底
- 継続的 顧客管理及び厳格な顧客管理措置、疑わしい取引の届出の質の向上
これを担当する府省庁等は、警察庁、特定非金融業者、職業専門家所管行政庁とされています。
弁護士だったら弁護士会になるのでしょうか?などの疑問もないではないですが、少なくともこれらの職業についても今後、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策が求められることになると思われます。
NPOについて
NPOについては、次のことが求められています。
- NPO がテロ資金供与に悪用されるリスクについて適切に評価
- リスク ベースでモニタリングの実施
- 高リスク地域で事業を実施する NPO の活動の健全性が維持されるよう、テ ロ資金供与リスクとテロ資金供与対策の好事例に関する周知
報告書でもありましたが、NPOについてはかなり懸念されている様子がうかがえます。そうすると、日本としてもこれに対する何らかの対策が求められますから、今後はマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策についてNPOにも関与が想定されます。
問題となるのは、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に人的資源を投入しなければならないのかという点でしょうか。非営利団体としては、あまりそこに資源を投入することは簡単にはできないような気もしますので、今後の動向に注目です。
まとめ
様々な業界に影響がある
マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策は、さまざまな業界に影響を及ぼすことが予想されます。一番はやはり地銀などが影響を受けるのではないでしょうか。海外送金などについては、より厳格なマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策が求められることとなりますし、継続的な顧客管理についてもかなりの資源を投入しなければならないこととなるでしょう。
そうすると、それは中小企業や個人事業主の方にも影響を及ぼすこともあるのではないかと考えます。
今後、どのような動きになるのかは十分注目ですし、法改正などもあり得ますから、最新の情報を常にキャッチしていきたいと思います。
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