第1回 アフィリエイト広告等に関する検討会(2021年6月10日)議事録の公開
本年10月14日、消費者庁は第1回アフィリエイト広告等に関する検討会(2021年6月10日)の議事録を公開しました。
アフィリエイト広告については、その広告主体が不明確になりがちであり、法的責任を追及することが困難という問題点があります。そのため、消費者庁はアフィリエイト広告についての規制を検討することとなりました。
<参考>
消費者庁「第1回 アフィリエイト広告等に関する検討会(2021年6月10日)」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_003/024308.html)
アフィリエイト広告の現状と論点
アフィリエイト広告とは
昨今では、インターネット技術の発達はめざましいのは、疑う余地のない事実です。これに伴い、インターネット上には多種多様な広告が存在します。
そして、この広告を応用して、お金を稼いでいる人たちもいます(もちろん、普通のビジネスです。)。
どのような方法かというと、概ね次のような流れで報酬を得ます。
今回の消費者庁の検討会では、アフィリエイター(成果報酬型のインターネット広告を自分のサイトなどで紹介し、そこから商品が売れたときに支払われる成果報酬を広告主から得ている人のことをいいます。)によるアフィリエイト広告を対象としています。
※アフィリエイターそのものを対象としているわけではないです。
アフィリエイト広告の問題点
さて、アフィリエイト広告は何が問題なのでしょう。まず、前提として、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号。以下「景品表示法」といいます。)では、商品等の供給主体(事業者)が、消費者に対して不当表示を行ってはいけないこととなっています。
そこで考えるべきなのは、「じゃあアフィリエイターは、商品等の供給主体なの?」ということです。つまり、
- アフィリエイターは、商品等の供給主体である。 = 事業者に責任が及ぶ。
- アフィリエイターは、商品等の供給主体でない。 = 事業者に責任は及ばない。
さぁどっち?という問題が発生します。
アフィリエイト広告の特性
アフィリエイト広告は、次のような問題があることが、検討会では取り上げられています。
- 広告主ではない者(アフィリエイター)が広告を作成・掲載するため、広告主の管理が及びにくい。
- アフィリエイターが成果報酬を求めて、虚偽誇大広告を行う動機が働きやすい。
- 広告主の責任意識が薄い。
- 消費者にとって、広告主が書いたものか否かが分かりにくい。
消費者庁「その話、本当? アフィリエイト広告ってなに?」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/assets/CMS219_210528_02.pdf)より引用
景品表示法の考え方
景品表示法の根拠条文
景品表示法で問題となる根拠条文を見てみましょう。検討会で取り上げられているのは、第5条の不当な表示の禁止と、第26条の事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置です。
(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置)
第二十六条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、景品類の提供又は表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、景品類の価額の最高額、総額その他の景品類の提供に関する事項及び商品又は役務の品質、規格その他の内容に係る表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。
2 内閣総理大臣は、前項の規定に基づき事業者が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において単に「指針」という。)を定めるものとする。
3 内閣総理大臣は、指針を定めようとするときは、あらかじめ、事業者の事業を所管する大臣及び公正取引委員会に協議するとともに、消費者委員会の意見を聴かなければならない。
4 内閣総理大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
5 前二項の規定は、指針の変更について準用する。
多分、初めて読む方はしんどくなると思います。
景品表示法の表示規制の対象となる事業者
上記の条文の対象となるには、次の2つの要件が必要だと解されています。
- 供給主体性(当該事業者が問題となる商品やサービスを供給しているといえること)
- 表示主体性(当該事業者が不当表示を行ったといえること)
①については、例えば製造者や販売者にとどまることなく、実質的に判断されるという国会答弁があります(「丸山穂高衆議院議員提出 インターネット商取引の多様化に伴う消費者保護の強化に関する質問に対する答弁書」 (令和2年3月27日閣議決定))。
②については、表示内容の決定に関与した事業者に認められます。また、他の者の表示内容に関する説明に基づき その内容を定めた場合や、他の者にその決定を委ねた場合も含まれます(東京高判平成20年5月23日(平成19年(行ケ)第5号))。
法解釈的には、わりと広範囲で景品表示法の対象となるようですが、取り締まりの実態は、必ずしもこの解釈をそのまま適用しているとはいえない気もします。
景品表示法上の管理措置
事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置(平成26年内閣府告示 第276号。改訂があります。)の内容には、次のように記載があります。
- 景品表示法の考え方の周知・啓発
- 法令順守の方針等の明確化
- 表示等に関する情報の確認
- 表示等に関する情報の共有
- 表示等を管理するための担当者等を定めること
- 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
- 不当な表示等が明らかになった場合における迅速な適切な対応
事業者の方にとっては、手間のかかることだと思いますが、消費者庁の活動は活発になっており、これにより消費者の保護を図っています。そうすると、リスクの低減のためには、しっかりと体制を整える必要があるといえるでしょう。
検討会で検討される点
景品表示法の適用などに関する考え方
検討会では、次のことを議論するようにとのことです。
- アフィリエイト広告の作成関係者(広告主・アフィリエイターなど。)の意識を高める。
- アフィリエイト広告の作成関係者にどのような対応が考えられるか。
- 広告主が最終的な責任を負うことを踏まえ、その管理がより一層行われるようにするためにはどのような対応が考えられるか。
これだけ見ると、必ずしも法改正が求められているというわけではなさそうです。今後は、ガイドラインの作成又は改訂や、立法や法規命令などによることのない、事業者の自発的な取り組みが求められるような印象を受けます。
不当表示の未然防止などの取り組み
不当表示の未然防止などの取り組みについては、悪質なアフィリエイターのみが排除され、不当表示の防止に向けて積極的に取り組んでいるアフィリエイターが選ばれるような仕組みは何かということを議論することが予定されています。
- 悪質なアフィリエイターが排除され、取り組みを行っているアフィリエイターが選ばれる仕組みの構築
- 消費者がアフィリエイターによる広告であると認識できるようにすることは、有益だろうか。
- 有益なのであれば、どのような方策があるか。
- そのほか、不当表示を防ぐために考えられることはあるか。
検討会の次回以降とまとめ
次回以降の検討会の流れ
令和3年中をめどに一定の結論を得ることを目標としています。
第2回・第3回 関係者ヒアリング(関係者の関与の実態、不当表示等の問題事例、対策等)
第4回からは論点整理
です。第4回は本年10月1日であって、すでに終わっています。アマゾンジャパン合同会社、楽天グループ株式会社から聞き取りを行っているようです。
第4階では、説明資料に基づき意見交換がなされています。
まとめ
消費者庁はかなり積極的に活動をしています。消費者庁が公表した検討会の報告書についてでも取り上げましたように、消費者保護に力を入れていることが分かります。
アフィリエイト広告については、インターネットの発達によって生じたものですが、コロナ禍においてその重要性は増してきています。巣ごもり需要によってネットに費やす時間が多くなった昨今においては、悪質な広告がある場合には是正が求められるでしょう。
このような動きがあると、悪質な事業者のみならず通常の運営をしている事業者にも影響が及ぶことがあります。人手が足りなくなったときには、弁護士その他の専門家に相談するのも良いと思います。
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