成年後見制度利用促進専門家会議について
成年後見制度の利用を促進するための専門家会議が、複数回にわたって開催されています。本年10月25日で第11回を迎えています。
成年後見制度とは?というのは、機会があった場合に触れるとして、今回は、国がどのような目的を持ってこの会議を開催しているのかについて、触れていきたいと思います。
<参考>
厚生労働省「成年後見制度利用促進基本計画について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000846697.pdf)
法務省「成年後見制度の利用促進 に関する取組について」(令和3年10月)(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000846689.pdf)
最高裁判所「福祉・行政と司法との連携」(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000846690.pdf)
成年後見制度利用促進計画について
成年後見制度利用促進計画の概要
さて、成年後見制度利用促進専門家会議が設置されるまでの経緯を、簡単に記載しておきましょう。
成年後見制度利用促進専門家会議が設置される発端は、平成28(2016)年5月に施行された「成年後見制度の利用の促進に関する法律」です。
この法律は、
- 高齢化社会における喫緊の課題
- 共生社会の実現
を目指し、そして、これらを達成することができるはずの成年後見制度が十分に利用されていないことを理由として施行されました。
なお、成年後見制度とは、例えば認知症などによって判断能力を欠くのが通常である方を保護するための制度ということと理解していただければ、本稿をお読みいただく上では十分です。
成年後見制度利用促進計画のポイント
成年後見制度利用促進計画のポイントは、次の3つとされています。
- 成年後見制度の利用者がメリットを時間できる制度や運用にするための改善
- 権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり
- 不正防止の徹底と利用しやすさとの調和
このうち、特に不正防止は重要です。なぜなら、「成年後見制度の運用改善等に関するワーキンググループ(第3回)」では、次のようなことが取り上げられているからです。このような課題を克服すべく、地域連携ネットワークづくりが目玉の仕組みとなるという構図です。
昨年度、約8億円の横領事件が起きておりまして、成年後見制度におきます 課題の一つになっているという現状でございます。
例えば、不正防止とか横領リスクについてお話しをすると、御本人を疑っているようで 気が引けてしまうという御意見ですとか、成年後見制度の利用を説明したら、御家族の方 が、横領が起きたらどうしてくれるのかということで、それを理由に利用することを拒む というケースも出ているという御意見をいただいております。
厚生労働省「成年後見制度利用促進専門家会議 第3回成年後見制度の運用改善等 に関するワーキング・グループ 議事録」24頁(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000843226.pdf)
地域連携ネットワーク
地域連携ネットワークとその中核となる機関は、概ね次の機関が重要です。
- 都道府県
- 弁護士会
- 司法書士会
- 社会福祉士会
- 家庭裁判所
このほかに、民生委員(民生委員法(昭和23年法律第198号)に基づいて、いわゆるボランティアで地域社会に貢献する方々をいいます。)や医療機関なども挙げられています。
厚生労働省「成年後見制度利用促進基本計画について」2頁(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000846697.pdf)より引用
行政書士会は入ってないの?というご質問がたまにあります。この点、成年後見制度は、特に家庭裁判所と連携する制度といえます。
例えば、後見開始の審判は、家庭裁判所に請求しなければなりません(民法第7条)し、後見人の事務も家庭裁判所へ書類を提出したりする場合が多いです(民法第4編第5章第3節(第853条から第869条))。
そのため、(行政書士が成年後見人に就職できないのかと言われれば、それはまた別の話になりますが、)このような議題で行政書士会があまり出てこないのは確かです。
なお、神奈川県行政書士会については、成年後見サポートについて積極的な活動を行っているとのことで、神奈川県についてはこのような議題で行政書士会も入っているというのを伺ったことがあります。
成年後見制度の利用促進 に関する取組について
成年後見制度の利用促進
以上までの計画を踏まえて、法務省では成年後見制度の利用促進を行っています。例えば、次のような広報活動です。
- 政府広報を利用した広報活動
- 法務省によるインターネット広告
- 成年後見制度・成年後見登記制度に関するパンフレット
- 映画とタイアップした広報活動
また、最高裁判所では、裁判所と現場に生じる「隙間」を埋めるべく、会議や自治体からの指摘を受けたことのある課題などを調査したり、その結果を受けてどのように調整するかを検討したりしています。
冒頭のリンクから、詳細をご覧いただくことができます。官民一体となって、成年後見制度を普及すべく取り組みを行っているということがわかります。
まとめ
まとめ
成年後見制度は、最近注目を集めています。高齢化社会に伴って老後のご検討をすることが増えていることが、その原因とも考えられます。
また、これに伴って遺言書や、死後事務委任契約なども認識されているようであり、老後や死後に備えた準備をお考えの方も多くいらっしゃいます。
特に財産については、トラブルの原因となりますから、ご検討の際には、早めに専門家に相談するとよいでしょう。
弁護士、司法書士、行政書士など分野ごとに違う専門家に相談されるのも良いでしょうし、弁護士に絞って何件か事務所でご相談されるという方法もあります。
10人いれば10通りの回答がありうる世界ですから、とにかく多くの意見を聞いてみることをお勧めします。
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