行政不服審査法の改善に向けた検討会の中間取りまとめについて②
前回のブログでは、行政不服審査法の改善に向けた検討会の中間取りまとめについて触れました。
今回も同取りまとめの内容である行政不服審査法を平成26年に改正したねらいと、その評価について一部触れていきたいと思います。
<参考>
総務省「「行政不服審査法の改善に向けた検討会 中間取りまとめ」についての意見募集」(令和3年10月25日)(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyokan01_02000134.html)
行政不服審査法の改善に向けた検討会の中間取りまとめ
平成26年法改正のねらい
平成26年に行政不服審査法は全面改正されました。その狙いは、
- 迅速な救済
- 制度の活用促進
- 公正性の向上
の3つでとされています。
迅速な救済
手続の迅速化
平成26年改正で整備された規定は次の点です。
- 標準審理期間の設定(法第16条)
- 審理関係人及び審理員の相互協力及び計画的遂行(法第28条)
- 審理員による陳述の制限(法第31条4項)
- 口頭で行う意見陳述(法第37条)
- 審理員による審理手続の併合又は分離(法第39条)
- 遅滞なき裁決(法第44条)
標準処理期間の設定
標準審理期間の設定とは、審査請求が到達してから裁決まで、普通ならどのくらいかかるのかについて、行政機関で分かりやすく定めるように頑張ってくださいねという規定です。
これは、定めた場合には公にすることが求められており、これにより、標準審理期間を設定した行政機関では一定の効果があったと指摘がされています。
他方、標準審理期間を設定している行政機関自体の数は、多くは存在しないということです。
検討会のとりまとめによれば、設定することにより、その期間内に処理しなければならない義務が課される(又はそのように審査請求者から誤解される)のではないかということが懸念されているような記載があります。
この点、人間は千差万別ですから、なかなか難しい問題です。ともあれ、標準審理期間の設定を行った場合には、一定の効果が示されていますから、審査請求をする側からすれば、ぜひとも設定していただきたい点となるでしょう。
審理関係人及び審理員の相互協力及び計画的遂行
審理関係人及び審理員の相互協力及び計画的遂行とは、審理に関係する全員が、審理において相互に協力し、審理手続の計画的な進行を図らなければならないとする規定です。
しかしながら、処分をした行政庁と、審理をする行政庁の間では必ずしもこれが行われておらず、例えば原処分を取り消したことを審査庁へ伝達していないとか、審査請求人からの問い合わせに審査庁が回答しないなどの事例が見られるとのことです。
このことから、相互の情報提供について、特に処分庁に対してマニュアル等を作成し、処理の仕方について示す措置を講ずるとのことです。
各審理手続の処理の促進
このほか、手続の迅速化を図るために、口頭意見陳述(申し立てた場合に、口頭で事件に関する意見を述べる機会)において不規則発言の制限を図ったり(法第31条4項)、書面での迅速な遂行が困難な場合に審査関係人を招集したり(法第37条)なども図られています。
しかし、これらの規定が逆に審理の遅延につながる事象が各手続の段階にあると評価されています。
例えば、審理員による争点の整理が十分でない場合などもあるようであり、この点を改善することは行政不服審査法の運用上の重要課題であるとされています。
まとめ
評価について
手続の迅速化については、平成26年に新たな規定が多く誕生しましたが、その運用は難題もあるようです。
もっとも、一回定めたからあとはスムーズにいくということは、どの世界にもないものでありますから、今回のとりまとめによって改めて必要不必要を見極めて法改正を行い、国民の権利を保護する制度になることが期待されます。
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