懲戒権に関する見直しについて

query_builder 2022/01/07
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 昨今、各報道機関によって、「懲戒権」の見直しが報じられています。


 懲戒権とは、親が子に対して監護や教育を行うために用意された制度です。


 すなわち、民法第822条によれば「親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。」と定められている制度のことを指します。


 懲戒権は、旧民法(明治民法よりもさらに前)から存在しており、明治民法も微修正を加えたのみでこれを承継し、戦後の改正の際にも特段の修正は加えられなかったとされています。


 今般、この規定が「児童虐待を正当化する口実に利用されている」という指摘から、見直しが行われることとなりました。



<参考資料>

法務省「懲戒権に関する規定の見直しについての検討(1)」(https://www.moj.go.jp/content/001305374.pdf

 

懲戒権

問題の所在


 先ほど述べましたとおり、民法に懲戒権に関する規定が定められています。


 これが児童虐待の正当化の口実に利用されているのも、前述のとおりです。


 そして、従来からこの規定の存在意義が問われ続けており、削除の声も上がっていましたが「正当なしつけもできなくなるとの誤解を招くことが懸念されたこと」から、削除自体は見送られていました。


 しかし、児童虐待が強く取り上げられるようになり、かつ、「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」(令和元年法律第46号)によって親権者の体罰の禁止が明文化されたことを受け、国会では次のように議論がなされました。


  1. その附則において「政府は、この法律の施行後2年を目途として、民法第822条の規定の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とされた。
  2. 法施行後2年を目途として検討される民法の懲戒権の在り方については、児童(子ども)の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、規定の削除を含め、早急に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること」との附帯決議がされた。

見直しの方向性について


 そこで見直しを行うことがかねてより検討されており、その方向性は、次のように分けられました。


  1. 懲戒権に関する規定を削除する。
  2. 懲らしめる、戒めるという「懲戒」の文言を改める
  3. 民法でも体罰禁止を明文化する。


 1については、これを削除することが児童虐待を防止する明確なメッセージとなることなどが理由とされています。


 2については、これを「しつけ」に改めるという提案がなされています。


 3については、1と併せて明文化することで、児童虐待を防止する明確なメッセージとなることを期待しているようです。また、これにともなってどのような行為が禁止されるかをより具体的に明確化することによって、親権者が正しくしつけをすることができ、もって子供の利益に資することも検討されています。


 懲戒権の究極的な目的は、「子の利益」であることは疑う余地はありません。したがって、懲戒やしつけ自体が問題ではなく、「子の利益」ではない懲戒やしつけ(たとえば憂さ晴らしなど)が問題となります。


 では「何が子の利益なのだろうか。」ということが、懲戒権の問題の本質です。

 

 例えば、「二度と同じことをしないように頭を強くたたいたり、背中を強く蹴ったりして体に染み込ませることも必要な場合があるだろう。」などという意見や、「抵抗することが見込めない子に対して、頭を強くたたくなどの有形力の行使は、仮に子の利益という目的があったとしても認めるべきではない」などという意見の双方があり、これが鋭く議論されることは、極めて重要だと思います。


 それに、子育てをされている方からすれば、どのような行為が禁止されてどのような行為が許されるのかというのは強い関心ごとであって、かつ、行動基準になるわけですから、単に「暴力はいけない!」というのみにとどまるべきではないといえるでしょう。


 これを受けて国会などでは、激しい議論が交わされているようです。


 最も重要なのは「子の利益」という点は、外してはいけません。

居所指定や職業許可に関する規定は


 ところで民法には、懲戒権と併せて次の規定もあります。


  1. 子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。(民法§821。以下「居所指定権」といいます。)
  2. 子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。(同§823。以下「職業許可権」といいます。)


 居所指定権がある理由は、親権者による監護教育の効果を上げるために存在するとされています。

 また、職業許可権がある理由も同様とされています。


 これらも併せて削除や調整をすべきではないかという指摘もありますが、今回はこれの見直しをするまでには及ばないようです。

今後の流れ


 読売新聞の報道によれば、今後の流れは次のとおりのようです。


親が子を戒めることを認める民法の「懲戒権」の規定の見直しを議論する法制審議会(法相の諮問機関)の担当部会は、同規定を削除し、体罰の禁止を明示する規定を盛り込む方針を固めた。2月上旬の担当部会合で要綱案を確定し、同月中旬に開かれる法制審の総会で決定する方向だ。政府は、17日召集予定の次期通常国会での民法改正案提出を視野に入れている。読売新聞オンライン「体罰・虐待を正当化する口実に…子への民法「懲戒権」見直しへ」(https://news.yahoo.co.jp/articles/f04b9f87a80d40a715e0c54acb102961809ec0bf

 見直しの結論としては、上記1と3を併せて行うようです。すなわち「懲戒権」に関する規定を削除した上で、体罰の禁止を明示する規定を盛り込むということです。


 これによって子を体罰から守ると共に、親権者が子の利益のためにしつけを行う際の行動基準を示して、適切な親子の関係を規律することを目指しています。


まとめ

目的は子の利益


 これらの議論については、もっぱら子の利益の観点から議論されることが多いです。


 「子の利益」とは何かというのは、一律に決められるものではありません。なぜなら、それは親権者の経験則や社会情勢などの不明確なものが基準となる場合が多いからです。


 そうすると、「子の利益」の名の下、虐待が行われたりすることもあります。

 

 大きな関心ごととして、数多くの報道機関によって報道がなされていますが、今後の動きに十分注意する必要があるでしょう。

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