パワハラ防止法について②

query_builder 2022/01/25
ブログ
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 前回のブログではパワハラの定義について触れました。今回は、本年4月1日から中小企業にも求められるパワハラ防止措置に触れたいと思います。

 

 この措置は、パワハラ防止法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)。以下「法」といいます。)第30条の2第3項に基づいて、厚生労働大臣が定めるものとされている指針によるものです。


<参考>

厚生労働省「労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されます!」(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000855268.pdf

厚生労働省「厚生労働省告示第五号」(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf

パワハラ防止法第30条の2第3項とこれに基づく指針

法第30条の2第3項とこれに基づく指針


 本年4月1日から中小企業にも求められる措置の大枠は、次のとおりです。


  1. パワハラに対する方針等の明確化・周知・啓発
  2. パワハラの相談に応じ、適切に対応するための体制整備
  3. パワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応
  4. その他必要事項


 これは法第30条の2第3項の次の法律に基づくものです。


(雇用管理上の措置等)
第三十条の二 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 (略)
3 
厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。


 そして、同条第3項に基づいて前掲厚生労働省告示第5号(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針。以下同じ。)が定められ、これが本年4月1日から中小企業にも適用されることとなります。


 前回のブログで述べたパワハラの定義も、同告示の中で明記されている内容となっています。

厚生労働省告示第5号

事業主の責務


 法第30条の3第2項は、次のとおり事業主の責務を明記しています。


(国、事業主及び労働者の責務)
第三十条の三 国は、労働者の就業環境を害する前条第一項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「優越的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
2 事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。


 なお、職場におけるパワーハラスメントに起因する問題としては、例えば、次のようなものが挙げられるとされています(前掲告示10頁)。


  • 労働者の意欲の低下などによる職場環境の悪化や職場全体の生産性の低下
  • 労働者の健康状態の悪化
  • 休職や退職などにつながり得ること
  • これらに伴う経営的な損失等


 まずは、このような責務があることが前提です。

事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき 措置の内容

パワハラに対する方針等の明確化・周知・啓発


 事業主は、職場におけるパワーハラスメントに関する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発として、次の措置を講じなければならないとされています(前掲告示11頁)。


  1. 職場におけるパワーハラスメントの内容及び職場におけるパワーハラスメントを行ってはな らない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。


 事業主の方針等を明確化し、労働者に周知・啓発していると認められる例としては、次のようなものが挙げられています。


  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を規定し、当該規定と併せて、職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景を労働者に周知・啓発すること。
  • 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景並びに職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を記載し、配布等すること。
  • 職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景並びに職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。
  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
  • 職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること。


 これは人員が不足している企業では形式的に行われる可能性がありますが、可能な限り実質的な周知・啓発をすべきでしょう。例えば、弁護士などの専門家に講習を依頼したり、又は行政庁がこのような講習を行うことがあるかもしれません。

 アンテナを張って、活用できそうな制度は活用するというのも、企業運営上、重要です。

パワハラの相談に応じるための体制整備


 事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必 要な体制の整備として、次の措置を講じなければいけません(前掲告示13頁)。


  1. 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。


 相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例としては、次のようなものが挙げられています。


  • 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
  • 相談に対応するための制度を設けること。
  • 外部の機関に相談への対応を委託すること


 パワハラの相談については繊細な取り扱いが必要です。パワハラに該当しないと思われるケースがあったり、その逆で相談時点ではパワハラといえないとしてもその後にパワハラに該当する可能性が極めて高いケースなども存在します。

 したがって、その体制作りは極めて重要となります。次のような場合には、その適切な対応ができるようにしていると認められるとされています。


  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
  • 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。

パワハラの相談に適切に対応するための体制整備


 また、パワハラの相談があった場合には、正確な事実確認の下、適切な措置を講じなければなりません(前掲告示15頁)。


 ただし、事実確認の際には当事者のプライバシーや名誉など配慮すべき事項も多いため、慎重に慎重を重ねなければなりません。


 そのため、自社内のみならず専門の委員会や第三者に協力を依頼するなどの対応も、視野に入れるべきでしょう。


  前掲告示にも同様の趣旨の記載があり、また、事実確認が困難な場合には、法第30条の6に基づく調停の申請を行うなども明記されています。


(調停の委任)
第三十条の六 都道府県労働局長は、第三十条の四に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。

 パワハラの事後対応もほぼ同様の流れです。つまり、基本的には、誠実に対応するという精神の下、仕組みづくりをすれば、自然と過不足ない仕組みが作れると思います。


 この分野の専門家としては、弁護士や社会保険労務士などが挙げられるでしょう。このような問題は、形式的に仕組み作りをしてもその費用は無駄になるので、投資するのであれば実質的にしっかりと有意義な仕組みを作るべきです。


 このような体制整備が整っていれば、企業価値も上がる余地がありますし、どの程度重視するかは、時代の流れを見て行うべきと考えます。そうすると、必然と投資すべき対象であると判断できるでしょう。

その他必要事項


 パワハラの相談者に対して、不利益な取扱いをしないことが強く求められています(前掲告示18頁)。


 これは、一般的に、パワハラやセクハラの被害者は社内での立場が低い者が受けやすい傾向にあるところ、告発される者は上級職位者となり、したがって、立場が低い者が報復を受けやすいという観点から明記されたと解されています。


 特に法でも定められているところであり、法第30条の2第2項にその旨が明記されています。


(雇用管理上の措置等) 第三十条の二 (略)
2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
3~6 (略)

 このようなことは法的にも禁止されていますから、一度問題が生じてしまうと、社会的にも制裁を受けるでしょう。

まとめ

まとめ


 パワハラに対する仕組み構築は、やはり誠実性を根拠として、仕組み構築をしていくべきと思われます。


 その上で、弁護士や社会保険労務士、あるいは行政庁などの専門的機関を利用することも良いでしょう。


 コンプライアンスが厳しく求められる昨今ではありますが、パワハラは被害者の人格権を侵害し、身体的精神的に多大な影響を及ぼす可能性がある重要な問題でありますので、やはり丁重に取り扱う必要があるといえるでしょう。


 しっかりとした仕組みを構築し、柔軟に対応できる体制を整備するのが望ましいでしょう。

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