民法(親子法制)等の改正に関する要綱案について

query_builder 2022/02/15
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 本年2月1日、法制審議会民法(親子法制)部会第25回会議において、民法改正案が取りまとめられました。


 昨今ニュースで話題になり始めていましたが、主なポイントは、


  • 懲戒権に関する規程の見直し
  • 嫡出推定の見直し
  • 女性に係る再婚禁止期間の廃止


 です。今回は、嫡出推定の見直しについて触れていこうと思います。


<参考>

法務省「民法(親子法制)等の改正に関する要綱案」(https://www.moj.go.jp/content/001366349.pdf

法務省「無戸籍でお困りの方へ」(https://www.moj.go.jp/MINJI/faq.html

法制審議会

法制審議会とは


 よくニュースで耳にする「法制審議会」とは何でしょうか。


 これは、法務省組織令第54条に基づく審議会です。


 所掌事務は、同第55条に定められています。


  • 法務大臣の諮問に応じて、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項を調査審議すること。


 さらに具体的なことは法制審議会令(昭和24年政令第134号)などに定められています。


 法制審議会には数個の部会が存在し、それぞれ専門的な知識を有する委員や幹事などがこれを審議しています。


  • 生殖補助医療関連親子法制部会
  • 民法(親子法制)部会
  • 民事訴訟法(IT化関係)部会
  • 仲裁法制部会
  • 家族法制部会
  • 担保法制部会
  • 戸籍法部会
  • 刑事法(性犯罪関係)部会

法制審議会民法(親子法制)部会


 さて、令和元年7月29日第1回法制審議会民法(親子法制)部会によれば、次の点が、法制審議会民法(親子法制)部会の設置理由であるとされています。


 すなわち、法制審議会総会第184回会議において、諮問第108号で


  • 児童虐待が社会問題になっている現状を踏まえて民法の懲戒権に関する規定等を見直すとともに
  • いわゆる無戸籍者の問題を解消する観点から民法の嫡出推定制度に関する規定等を見直す必要がある


 から、その要綱を示してくれというものです。


 児童虐待などはニュースで取り上げられることが多くなってきたため、これを知らないという方はあまり想像はできませんが、無戸籍者についてはご存じないという方ももしかしたらいらっしゃるかもしれません。

法制審議会が取り上げた無戸籍者問題


 法務省の資料によれば、令和元年6月10日現在、把握した無戸籍者の累計は2,407人、解消された人数が1,577人とされています。


法務省「無戸籍者問題の解消のための法務省の取組」(https://www.moj.go.jp/content/001301548.pdf


 通常、子が出生した場合には、出生届によってその子が戸籍(「戸」と呼ばれる家族集団単位で国民を登録する目的で作成される公文書をいいます。)に記載されますが、何らかの理由によって出生届がなされないため、戸籍に記載されない子が存在するという問題が、無戸籍者問題と称されています。


 無戸籍者は、選挙権の行使、住民票の作成、パスポートの発給申請、国民健康保険への加入、銀行口座の開設等ができない、あるいは それらに支障があるだけでなく、進学、就 職、結婚といった場面でも不利益を被っているとされています(「無戸籍問題」をめぐる現状と論点」立法と調査(2016.10・№381の100頁)(https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2016pdf/20161003098.pdf))。

嫡出推定制度とは


 ここで一旦、嫡出推定制度について説明します。


 嫡出とは、婚姻関係にある男女(夫婦)から生まれることをいいます。つまり、嫡出推定制度とは、「その子は、とりあえず夫婦間で生まれた子ということにしましょう」という制度です。


 なぜこのような制度があるかというと、次のように説明されています。


 すなわち、生まれてくる子は通常、分娩室で母から生まれてきます。この事実によって、その子はその母から生まれたことは明らかです。


 しかし、父はどうでしょう。母から生まれた子が、その夫の子であることは、必然ではありません。


 もっとも、「必然ではない≠父ではない」というのはちょっと無理があります。歴史的経験上、生まれてきた子は、その母と夫との間の子であることがほとんどだからです。


 そうして、法的にはこれを「その子は、とりあえず夫婦間で生まれた子ということにしましょう。」というルールを作ることにして、まとめたのです。これが、民法(明治29年法律第89号により成立し、令和3年法律第37号により改正されたもの。)第772条第1項です。


(嫡出の推定)
第七百七十二条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。


 ただし、これだけだと夫としては、婚姻中に子を授かったときは、誰の男の子でも夫と推定されることとなります。これはこれで、なんかおかしい気もします。


 ということで、今度は経験則ではなく医学的統計に基づいて(と説明されているようです。第190回国会衆議院法務委員会議録第19号10頁(平成28.5.20))、次のとおり生まれた子は、婚姻中に子を授かったことと推定するとしました。


    婚姻の成立の日から200日を経過した後に生まれた子

婚姻(いわゆる前婚)の解消・取消しの日から300日以内に生まれた子


(嫡出の推定)
第七百七十二条 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。



 嫡出推定の目的は、親子関係の早期安定化です。ここで、もう一つ踏み込まなければなりません。それは、「誰のために親子関係を早期に安定化させる必要があるのか?」です。


 この点は一般的には、「この福祉のために」という答えが返ってきます(前掲立法と調査99頁)。


 以上によれば、簡単にこれは覆されてはなりません。したがって、夫が「その子はオレの子じゃない!」と主張するには、嫡出否認の訴えという裁判を起こす必要があります(民法§774、§775)し、しかも既に自分の子と認めた場合や子が生まれたことを知った時から1年を経過した場合には、その訴えすら起こすことはできません(同§776,§777)。

出生届が出されないケース


 出生届が出されない多くの場合は、前夫との関係から生じます。


 つまり、結婚して子を授かったものの離婚した場合において、その結婚の成立から200日経過した場合には、離婚したとしても前夫の子と推定されます。


 また、離婚したとしてもその300日以内に出産した場合には、同様に前夫の子と推定されます。


 そして出生届が出されれば「前夫の子」として戸籍に記載されますが、このように処理したくない場合には、親子関係不存在確認や強制認知の手続をしなければなりません(嫡出否認の訴えはこの場合、前夫にしか認められないため。民法§774参照。また、これが令和2年に最高裁で争いとなっていました。日本経済新聞「嫡出否認「夫のみ」合憲が確定 最高裁が上告退ける」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55395290X00C20A2CR8000/))。


 しかし、前夫からDVなどを受けていたケースでは、前夫にその子の存在を知られたくないなどの理由から、親子関係不存在確認などをしないまま、出生届の提出が見送られてしまい、戸籍に記載されない子が生じることとなります。

まとめ


 以上を前提とすると、嫡出推定の制度を見直す必要性がある気がします。


 そこで法制審議会が調査審議をし、その結果、次のように結論したようです。


  • 嫡出の推定の見直し

女性に係る再婚禁止期間の廃止


 実際に法案が通ってみないと何とも正確にはお伝えすることができませんが、結構改正されるようです。


 要綱によれば、嫡出否認制度は、否認権者の拡大(子や、場合によっては母なども。)、嫡出否認の訴えの提起権者の見直し、嫡出否認の訴えの出訴期間を伸長する、などがあるようです。


 一部報道もありますが、なかなか要綱案に当たってもうまく読み取れないので、実際に条文の形になってもう一度見てみようと思います。今後の動きに注目です。

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