新生活に伴って賃貸借契約をする際の注意点
ご存知本年4月1日から、成年年齢が引き下げられ、18歳を迎えた方は成年となります。
ところで、4月1日から新生活を迎えるに当たり、お部屋を借りてそこに住む方もいらっしゃると思います。
このような契約にはトラブルが少なくなく、全国の消費生活センター等にも相談があるようです。
今回は、お部屋を借りる際に、どのような点に注意するべきかについて、触れていきたいと思います。
<参考>
独立行政法人国民生活センター「【若者向け注意喚起シリーズ<No.10>】新しいお部屋で新生活!「賃貸借契約」を理解して、トラブルを防ごう!!」(https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20220303_1.html)
居住用住居の賃貸借契約
事例
全国の消費生活センター等には、次のような相談があるようです。
【事例1】入居前に解約を申し出たが支払ったお金が返金されない
娘が賃貸マンションを借りることになり、営業所に出向いて娘が契約書にサインし、私が保証契約書にサインして仲介手数料、敷金(家 賃 1 カ月分)を含む約 18 万円を支払った。
その後、娘が体調を崩して入居できなくなったため、仲介業者に解約を申し出たところ、「契約は成立している。受け取った金額のうち、清掃費用2万円のみ返還できる。その他は返金できない」と言われた。
契約書には、解約時の違約金として家賃 1 カ月分と記載されていた。鍵も受け取っていないのに、支払ったお金がほとんど返ってこない。自己都合であることはわかっ ているが、なんとかならないか。
【事例2】退去時に高額な原状回復費用を請求された
2年間居住した賃貸マンションを退去した後、貸主から、ハウスク リーニング費用やクロス・天井の貼り替え費用、エアコン洗浄費用、 風呂の鏡のうろこ取り等で計 17 万円もの原状回復費用を請求された。
契約時に敷金礼金はなく、家賃は約 12 万円で、契約書に原状回復に関する特約もなかった。普通に掃除はしており、タバコは吸っていないしペットも飼っていない。クロスは細かいキズがあるため修復するというが、家具を置いた際についたもので、高額な請求に納得できない。独立行政法人国民生活センター「若者向け注意喚起シリーズ<No.10>」から引用
トラブル防止のポイント
契約時
契約書類の記載内容をよく確認しましょう。国民生活センターによれば、例えば「ルームクリーニング費用は全額借主負担」という特約がないかなどを確認しておくとよいとされています。
原則として、日本は契約について、次のように定めています。
民法(明治29年法律第89号)
(契約の締結及び内容の自由)
第五百二十一条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
(契約の成立と方式)
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
これが例えば、消費者の権利を制限したり義務を加重するものなどは、無効となる場合もあります(消費者契約法§10)が、無効を主張して確定させるためには手間と費用が掛かります。そのため現実には「あ、この条項は消費者契約法に反してるから無効だ。」と知りながら契約するのは、得策ではありません。
成年になれば「交渉」というのも社会生活上必要な活動です。疑問があれば質問、検討を行い、契約締結に値するかを慎重に吟味する必要があります。
また、契約締結前に必ず現物を確認しましょう。その際に、契約締結前からあった傷や汚れは、写真等に納めておくと効果的です。なぜなら、退去時に貸主から「これもあなたがつけた傷ですよね?」と言われたときに、防御できるからです。
もし面倒であれば、すべて弁護士や行政書士などの専門家に依頼するのも手です。弁護士であれば交渉まで行ってくれる場合もありますし、行政書士であれば事実証明に関する書類の作成もできますから、入居時の現状確認を証明する書類を作成することができます。
弁護士や行政書士などの無料相談などもありますから、活用するのも大事ですし、このような制度を活用することによって「誰かに相談する」という訓練になると思います。
入居中
雨漏りやトイレのトラブルなどは、発生したらすぐに貸主(管理会社を含む。)に相談しましょう。
無断で修繕等を行うと、損をする可能性がありますし、トラブルが生じる場合もあります。
法律による原則は、次のとおり貸主側に修繕義務がありますが、これは契約の内容によって変更することができますから、先ほど述べましたとおりよく契約書を読みましょう。
民法
(賃貸人による修繕等)
第六百六条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
退去時
退去時では、貸主と借主のどちらが元通りにする費用を支払うのか(これを原状回復といいます。)について、トラブルになることがよくあります。
この点について国土交通省では「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html。国土交通省のホームページに飛びます。)を公表していますので、参考になります。
どうしても話し合いで解決しない場合には、必ず弁護士に相談しましょう。
まとめ
成年になれば自己責任
成年になれば、自己責任を問われることが多くなります。しかしこれは、「すべて自分で抱え込むべき」というわけではありません。ときには専門家に相談したり、行政機関に助けを求めたりすることも必要です。
特に賃貸借契約についてトラブルになったら弁護士や消費生活センター(188に電話して)相談するなど、適切な対処をするとよいでしょう。
また、日ごろから借りたものはきれいに使うなど、心がけも必要です。
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