取引デジタルプラットフォーム消費者保護法とは?
第204回通常国会での審議を経て、2021年4月28日に成立した「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(令和3年法律第32号。以下では、取引デジタルプラットフォームを「デジタルプラットフォーム」といい、この法律を「デジタルプラットフォーム法」といいます。)」が、本年5月1日に施行されます。
現代では、デジタルプラットフォームは経済活動の重要な要素となっていることは、公知の事実であり、およそデジタルプラットフォームを使ったことがない人はいないと思います。
消費者委員会「オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会報告書」(https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/online_pf/doc/201904_opf_houkoku.pdf)から引用
amazon、楽天などや、Yahooオークションなどが例に挙げられると思います。
今回、施行に先立って、内容をちょっと見てみたいと思います。
DPF法
DPF法の目的
デジタルプラットフォーム法は、次のようなことをもって、消費者の利益を保護することを目的としています。
- デジタルプラットフォーム事業者による自主的な取り組みの促進
- 内閣総理大臣によるデジタルプラットフォーム事業の利用停止要請
- 消費者による販売業者等の情報開示請求
デジタルプラットフォームは、形式的には、デジタルプラットフォーム事業者が「場」を提供するのみとなることが多く、「場」を使って商品等を販売しようとする事業者の個別具体的な審査は、あまり行われることはないようです。
前掲消費者委員会から引用(赤丸筆者加筆)
そうすると、例えば粗悪品や模倣品を販売する事業者が紛れ込んでしまい、最終的にその商品を買った消費者が被害を受けるということとなります。
このような消費者被害の件数は、デジタルプラットフォーム市場の拡大に伴い、増加傾向にありました。
前掲消費者委員会から引用
そのため、主に上記3点をデジタルプラットフォーム法で定めることによって、消費者の利益の保護を図ろうというわけです。
デジタルプラットフォーム事業者はなにをしなければいけないのか?
デジタルプラットフォーム法では、デジタルプラットフォーム事業者に法的義務が課されているという部分は少なく、そのほとんどが努力義務となっています。
例えば、法第3条は、デジタルプラットフォーム事業者の努力義務を定めています。
努力義務ですから、頑張ることが求められます。
- 消費者が販売者と円滑に連絡することができるような措置を講ずること。
- 消費者から苦情があった場合、事実の調査や表示の適正を確保するための措置を講ずること。
- 販売者に対して、必要に応じて、所在地その他の情報の提供を求めること。
- 以上の措置の概要と実施状況を開示すること。
努力義務を努力することは、他社との差別化という意味では意義があります。どのような取り組みをし、それをどのように広報するかという視点からも、この努力義務については検討するのも良いかもしれません。
なお、「円滑に連絡することができるような措置」として、消費者と販売者との間のみで行うことができるチャット機能などを導入しようと考えている場合には、電気通信事業法上の登録または届出を要すると判断される場合がありますので、注意が必要です。
総務省「電気通信事業参入マニュアル[追補版](令和元年10月1日最終改定)」12頁(4.主な事例と考え方(1)登録または届出を要する事例)から引用
消費者の開示請求
デジタルプラットフォーム上でトラブルにあった消費者は、基本的には、特定商取引法上販売者に課されている表示義務(名称や住所の表示をしなければならないという義務。特商法施行規則§8一)がありますから、これを見て権利回復を試みます。
しかし、その表示に虚偽が含まれている場合などには、消費者は販売者の情報を正しく知ることはできません。
そこで消費者は、一定の条件で、販売者に関する情報の開示を請求できる制度が設けられました(デジタルプラットフォーム法§5)。
その条件は、おおむね次のとおりです。
- 消費者が自己の債権を行使するためであるもの。
- 書面(電磁的記録を含む。)を提出すること。
- 書面には、請求の理由、項目、不正利用しない誓約を記載すること。
この点は、施行後はトラブルが多発するような気がします。請求する場合には、弁護士に依頼するなどして対応することが望ましいと思います。
まとめ
今後の流れ
今後の流れとしては、デジタルプラットフォーム法が本年5月1日に施行されます。
また、消費者庁がガイドラインを公表しました。
そして、おそらくトラブルの数に伴い、特に消費者による開示請求も増加することが予想されます。
請求の際には、消費生活センターや弁護士に相談して、適切に淡々と請求するという方針が、合理的だと思います。
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