SNSで消費生活相談?

query_builder 2022/04/26
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 4月25日、消費者庁は、かねてより実施していた「LINE」を活用した消費生活相談の方法について、その実施結果を分析した調査報告書を公開しました。


 これによれば、特に10代と20代の世代において、利用が増加したという結果が報告されています。


 この実施は、まだ地域限定の取組ですが、これが全国展開するに至れば、ある程度の効果が見込めるかもしれず、それに先立って少し触れてみたいと思います。


<参考>

消費者庁

「SNSを活用した消費生活相談の実証事業について」(https://www.caa.go.jp/notice/entry/026433/index.html

「SNSを活用した消費生活相談の実証実験」(https://www.caa.go.jp/policies/future/project/project_004/

「SNS を活用した消費生活相談の試行・分析業務 調査報告書」(https://www.caa.go.jp/policies/future/project_004/assets/future_cms201_220425_02.pdf

「SNSを活用した消費生活相談の実証事業 概要」(https://www.caa.go.jp/policies/future/project_004/assets/future_cms201_220425_01.pdf

SNSを活用した消費生活相談

SNSを活用した消費生活相談の実施目的


 SNSを活用した消費生活相談の実施の主な目的は、成年年齢引き下げがきっかけとされています(前掲調査報告書1頁)。


 ご存知のとおり、本年4月1日から、18歳以上の者は成年として取り扱われました(民法§4)。


 これによって18歳以上であれば、両親の同意を得なくても、単独で、契約などの法律行為をすることができるようになりました。逆をいえば、18歳以上の者が行う契約等は、簡単には取り消すことができなくなるともいえます(民法§5)。


 そこで、消費生活相談に関する相談手段について、これを多様化した方がよいのではないか?という問題提起がされました。


 特に10代や20代の若者は、①日常生活であまり電話を利用しない傾向にあり、かつ、②トラブルに合っても消費生活センター等の公的な相談窓口に相談しない傾向にあることが指摘されています(前掲概要1頁)。

前掲概要1頁から引用


前掲概要1頁から引用


 そうすると、消費生活相談をLINEですればいいのでは?という結論に至り、その検討・検証が行われたという流れのようです。

SNSを活用した消費生活相談の実施概要


 SNSを活用した消費生活相談は、次のとおり実施されました(前掲報告書2頁から3頁)。


<公益社団法人全国消費生活相談員協会による実施>

 【対象者】兵庫県、和歌山県、広島県在住者

 【実施期間】2021年11月2日から2022年1月29日

       火、水、木、金、土(年末年始を除く。)

 【実施時間】相談受付は24時間

 【相談内容】消費者トラブル全般(契約トラブル、製品やサービスによる事故)


<京都府(消費生活安全センター)による実施>

 

 【対象者】京都府在住者

 【実施期間】2021年11月1日から2022年1月31日

       月、火、水、木、金(年末年始を除く。)

 【実施時間】相談受付は24時間

 【相談内容】消費者トラブル全般(契約トラブル、製品やサービスによる事故)



 SNSを活用した消費生活相談ですので、相談受付は24時間可能だったとのことです。これを受けて消費生活相談員等が、日中の時間帯に回答するという流れと報告されています(前掲報告書2頁)。なお、この際の情報セキュリティ対策も行われています(同4頁)。



前掲概要3頁から引用


前掲報告書15頁から引用

相談事例

契約当事者からの相談


 SNSを活用した消費生活相談の事例としては、様々なようですが、そのなかから①契約当事者からの相談、②左記①以外の者からの相談を抜粋したいと思います。


 どんな相談ができるのだろうかと疑問に思われる方は、ぜひ内容をご覧いただくと、イメージが湧くと思います(前掲報告書40頁から42頁)。


  • 頼んだ覚えのないマスクが届いた。どうしたらいいか。(30 代 男性)
  • お試し脱毛クリームを注文。定期購入で縛りがあり、高額で払えない。(10 代 男性)
  • 債権回収業者から身に覚えのない連絡がSMSで届いた。(10 代 女性)
  • 法律事務所から20年前の借金の督促が来たがどうしたらよいか。(40 代 女性 )
  • ポイントアプリから誘導された動画配信アプリを登録翌日に解約したはずが解約になっ ていないと料金を請求された。(20 代女性)
  • 検索エンジンで自分の名前を検索すると表示される写真の画像を消したい。(10 代 男性)
  • スマホに宅配業者から不在通知の SMS が届いたが覚えがない。(10 代 女性)
  • 化粧品のカタログ通販の表示が問題だ。情報提供先を知りたい。(40 代 女性)
  • 良心的な水道トラブル工事をする業者はわかるか。(30 代 女性)
  • 痩せるお茶を海外から買ったが下痢をした。(50 代 女性)
  • 賃貸マンションを退去したが、原状回復費用に納得がいかない。(40 代 男性)
  • 海外送金で送金先を間違えたら、説明のなかった手数料が請求された。(30 代 男性)

契約当事者以外からの相談


 契約当事者以外からの相談は、次のようなものが報告されています。


  • 未成年の子がオンラインゲームで高額課金をしてクレジットカードに請求があがった。 (40 代男性)
  • 未成年の娘がネット通販でスマホケースを注文したが届かない。(40 代 女性)
  • 離れて暮らす実家の親が保険金を使っての屋根修理の勧誘を受けており心配だ。(40 代 女性)
  • 知人の金銭トラブルについて(70 代 女性)
  • 父宛の宅配物を受け取ったが心当たりがない。どうしたらよいか。(60 代 女性)
  • 娘夫婦がコロナ禍で5月の結婚式を解約したら、キャンセル料が高額だ。娘婿に電話し て詳細を聞いてほしい。(60 代 男性)
  • 17 歳の息子がオンラインゲームで知り合った 30 代女性と付き合っていて心配だ。(40 代 女性)
  • 21 歳の息子が暗号資産の業者に投資し、出金できない。(40 代 女性)
  • 亡父の遺品整理中に通販で購入されたであろう健康食品が見つかった。怪しげな通販で 残債ありというが払いたくない。(60 代 男性)
  • 未成年の息子が定期購入の契約をしたというが残り 4 回を解約したい。(40 代 女性)

SNSを活用した消費生活相談のアンケート

LINE友達登録者・相談者の感想


 前掲報告書54頁では、LINE友達登録者997名にアンケートをし、そのうち136名から得た回答が報告されています。


前掲報告書54頁から引用


 これによれば、「満足」「やや満足」は52.3%、「不満」「やや不満」は23.8%のようです。


 不満の理由は、抜本的な解決に至っていないという点や、返信が遅いなどがあるようです。もっとも、相談のしやすさ自体は好評のようです。


前掲報告書55頁から引用

まとめ

SNSを活用した消費生活相談の今後の課題や評価


 今後の課題として報告書で取り上げられているのは、相談を受ける際に用いるシステムの課題、SNSでは対応困難な事案の電話対応への切り替えなどが課題であるとされています(前掲報告書60頁)。


 他方、評価としては、チャットは文字のみでのやりとりであることから、親や周りの人に聞かれたくないなどの相談者のニーズがあり、これを有効的に広報すべきであるとされています。


 たしかに、電話などだと、特に若者は成年といえども実家暮らしであることも多く、部屋から声が漏れることによって両親に聞かれてしまうなどもあり得ることから、この点は有意義だと感じます。


 このような課題をクリアしていって、ゆくゆくは全国展開に至れば、消費生活相談の方法が一つ増え、消費者の利益に資するのではと期待しているため、今後の動きに注目です。

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