【景表法】摘発の動き
本年5月26日、消費者庁は「令和3年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組」を公表しました。
消費者庁はこの件について、不当表示及び過大景品類提供に対して、景品表示法の規定に基づいて厳正・迅速に対処するとともに、同法の普及・啓発活動を行うなど、表示等の適正化に努めており、令和3年4月1日から令和4年3月31日までの消費者庁における景品表示法の運用状況等を取りまとめたものということです。
<参考>
消費者庁「「令和3年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組」の公表について」(https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_220526_01.pdf)
景品表示法に基づく消費者庁の取組
景品表示法違反があるとどうなる?
消費者庁が、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号。以下「景品表示法」といいます。)違反があると考えたとき、どのような流れで調査等が行われるのでしょう?
まず、調査のきっかけとして、職権探知、情報提供、自主報告が挙げられています(前掲消費者庁2頁)。なお、令和元年度から同3年度までの件数の推移は、次のとおりです。
興味深いのが、情報提供数が年々増えている点です。もっとも、これに基づいて調査が行われている件数は年々減っているという皮肉です。
情報提供といっても、憂さ晴らしなどもないではないでしょうから、調査のきっかけとはならないということもあるのでしょう。実際に、この点について消費者庁は次のように述べています。
外部から提供された情報に基づき、景品表示法違反被疑事案として処理することが適当と思われた事案数(前掲消費者庁2頁)
ただし、情報提供数自体は増えているという点は、注意すべきだと思います。なぜなら、それだけ一般消費者の目は光っているからです。
なお、令和3年度における処理は、次のとおりです。食品と保健衛生品に対する指導が多いですね。これは個人的には、サプリメントや消毒液(コロナ関係)が多かった印象があります。
景品表示法と健康増進法との一体的な執行
昨今、健康食品のインターネット広告が活発です。そのため、消費者庁では次のような体制を整えています。
対応責任室:表示対策課食品表示対策室・ヘルスケア表示指導室
資料 :健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
以上に基づいて、健康増進法(平成14年法律第103号。以下同じ。)65条1項の規定に違反するおそれのある事業者に対して、表示の改善を要請したとしています(前掲消費者庁)。改善が要請された事業者の数は、実に736の事業者とされています。
景品表示法に基づく行政処分とそれに対する取消訴訟
景品表示法に基づく措置命令等に対しては、行政不服審査法(平成26年法律第68号。以下同じ。)に基づく審査請求のほか、行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号。以下同じ。)に基づく取消訴訟ができます。
景品表示法に基づく行政処分の命令書には、法律に基づいて次の記載が求められていますので、不服である場合には適宜根拠条文を参考にして、不服を申し立てることができるでしょう。(行政不服審査法§82①、行政事件訴訟法§46①)
この処分について不服がある場合には、行政不服審査法第2条、第4条及び第18条 第1項の規定に基づき、正当な理由があるときを除き、この処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に、書面により消費者庁長官に対し審査請求をする ことができる。 (注)行政不服審査法第18条第2項の規定により、正当な理由があるときを除き、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内であっても、処分の日の翌日から起算して1年を経過したときは、審査請求をすることができなくなる。
訴訟により、この処分の取消しを求める場合には、行政事件訴訟法第11条第1項及 び第14条第1項の規定に基づき、この処分があったことを知った日の翌日から起算 して6か月以内に、国(代表者法務大臣)を被告として、この処分の取消しの訴えを提起することができる。
(注1)行政事件訴訟法第14条第2項の規定により、正当な理由があるときを除き、 この処分があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内であっても、 この処分の日の翌日から起算して1年を経過すると、この処分の取消しの訴えを提起することができなくなる。 (注2)行政事件訴訟法第14条第3項の規定により、正当な理由があるときを除き、 審査請求をして裁決があった場合には、この処分の取消しの訴えは、その裁決があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に提起することができる。 ただし、正当な理由があるときを除き、その裁決があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内であっても、その裁決の日の翌日から起算して1年を経過すると、この処分の取消しの訴えを提起することができなくなる。
実際に、次のとおり取消訴訟を提起している事業者もあります(前掲消費者庁7頁)。
- 平成30年 8月24日 措置命令に対する取消訴訟(最終的に上告不受理)
- 令和 3年 4月12日 措置命令に対する取消訴訟(地裁・請求棄却)
- 令和 3年 4月30日 措置命令に対する取消訴訟(訴訟係属中)
- 令和 3年12月24日 課徴金納付命令に対する取消訴訟(訴訟係属中)
- 令和 3年12月14日 措置命令に対する差止訴訟(最終的に訴え取り下げ)
景品表示法に関する相談業務
以上のような対応は手間がかかりますので、事前に予防できたらいいですよね。しかも、事前に予防できたら一般消費者の誤認防止にも役立ちますから、消費者庁も大歓迎なはずです。
そこで消費者庁は、公正取引委員会と共に、事業者がこれから行う商品・サービスに関する景品表示法違反防止の事前相談に応じています。(詳しくはこちら。消費者庁の「景品表示法に関する御相談」というページに飛びます。)
相談内容としては、次のようなものがあったと掲げられています(前掲消費者庁15頁)。
表示に関するもの
- 食品
- 効果・性能
- 除菌・抗菌・抗ウイルス
- 二重価格表示(1つの商品に2つ以上の価格を表示すること。例えば「通常5,000円⇒3,500円!」など。)
景品表示法に基づく都道府県の取組
景品表示法に基づく都道府県の権限
消費者庁のほか、都道府県知事は、景品表示法33条11項及びこれに基づく景品表示法施行令23条に基づいて、自らの判断と権限によって景品表示法を運用することができます。
これに基づく措置命令は、令和3年度は4件行われています。
前掲消費者庁8頁から引用
年々減ってますね。なお、都道府県別だと、次のとおりです。東京都では年2件は命令出そうなどのノルマでもあるのでしょうか。毎年2件で推移しています。
前掲消費者庁8頁から引用
まとめ
景品表示法の対応の仕方
景品表示法の対応の仕方は、企画⇒相談⇒検討⇒広告制作・景品準備⇒確認⇒実施などの順に行うのが、一番適切でしょう。
特に相談は、消費者庁に問い合わせるのも良いですし、弁護士などの専門家に相談するのも良いでしょう。
一般的な感覚としては、監督機関として活動する消費者庁に相談すると、いわゆるグレーゾーンだった場合、OKとはいえない傾向にあるでしょう。そうすると、協力的(その後の不服申立てや訴訟の検討も併せてしてくれるような)な弁護士に相談するのが、いい場合もあります。
景品の提供や広告の表示は、事業活動において欠かせない要素でありますから、その目的を明確にすることが大事です。すなわち、「景品の提供・広告の表示それ自体が目的」なのか、「顧客獲得が目的」なのかです。
前者である場合にはそこまでチャレンジングなことは要しませんが、例えば「1億円キャンペーン!」などの場合には、綿密に計画・検討した上で弁護士などに適法性を相談するのがよいでしょう。
いずれにせよ、景品表示法を意識するというのが、のちのちのトラブルを防ぐ何よりの予防策です。
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