スシローと景品表示法
各種報道機関によって大々的に報道されていますが、消費者庁は、本年6月9日に、スシローに対して景品表示法に基づいて措置命令を行いました。
根拠条項は景品表示法5条3号に基づいた平成5年4月28日公正取引委員会告示第17号に定めるおとり広告としています。
おとり広告とは何なのか?という観点から触れていきたいと思います。
<参考>
消費者庁「株式会社あきんどスシローに対する景品表示法に基づく措置命令について」(https://www.caa.go.jp/notice/entry/029023/)
消費者庁「おとり広告に関する表示」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/case_002/)
消費者庁「景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/violation/)
景品表示法
景品表示法上のおとり広告とは?
おとり広告は、景品表示法5条3号に基づいた平成5年4月28日公正取引委員会告示第17号に定められています。
景品表示法
(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一~二 (略)
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
そして景品表示法5条3号に基づいて、次のように、商品・サービスが実際には購入できないにもかかわらず、購入できるかのような表示を不当表示としています。
- 取引を行うための準備がないのに表示する。
- 供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていないのに表示する。
- 供給期間・供給の相手方・顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていないのに表示する。
- 合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合や実際には取引する意思がないのに表示する。
景品表示法上のおとり広告とされた行為は?
今回は、インターネット・地上波テレビコマーシャルで「世界のうまいもん祭」と称して宣伝したもののうち「新物!濃厚うに包」などを注文しようとした消費者に対して、提供するための準備がされておらず取引に応じることができなかったことが、1と4に違反したとされています(消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法第7条第1項の規定に基づく措置命令」(消表対第744号)5頁。3(1)(2)(3))。
消費者庁は、おとり広告の留意事項について「事業者は、広告、ビラ等において広く消費者に対し取引の申出をした広告商品等については、消費者の需要に自らの申出どおり対応することが必要であり、また、何らかの 事情により取引に応じることについて制約がある場合には、広告、ビラ等においてその旨を明瞭に表示することが必要である。」と述べています(消費者庁「「おとり広告に関する表示」等の運用基準」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_31.pdf)1頁。第1の1。)
また、2021年9月から12月ごろの間の表示が、事後的に措置命令として処分されるのも、行政処分の特徴です。なかなか「あーよかったよかった」というわけにはいかず、忘れたころにくるというのは心臓に悪いですね。ですので、事前にあらかじめ防止策や検討をする必要があると個人的には思います。
世間の評価は?
本件はかなり有名な企業ということもあって、各報道機関が大々的に報じています。その中には、法解釈のコメントなどもありますので、ちょっと触れてみましょう。
荻谷弁護士のコメント
公正取引委員会や消費者庁の運用判断基準としては「供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明確に表示されていない場合」おとり広告に当たるとされているんですね。 今回大々的にキャンペーンを張って、しかも目玉商品であったというところもポイントだと思います。その目玉商品につられて、この期間中にあるはずだと考えて消費者が行くけれども十分な量がなかった。そこに悪質性を認定されたのではないかなと思うんですね。
(TBS NEWS DIG「「ウニ」「カニ」が無い…“おとり広告”スシローに措置命令 “仕方ないね”で終わらなかった理由は?弁護士解説」(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/66672?display=1)から引用)
「つられて」というのがポイントだと仰っています。景品表示法は「商品及び役務の取引に関連する不当な・・・表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。」としていますので、確かにこれがポイントといえると考えます。
また、公正取引委員会は次のようなコメントをしているようです。
「今回の不当表示を行った事業者が、シェアで業界1位ということを考えると、本件の不当表示が一般消費者に悪影響を与えた程度は非常に大きなものであった」
(テレ朝news「“重い行政処分”下した理由は?スシロー“おとり広告”で措置命令 スタジオ解説」(https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000257550.html)から引用)
このコメントについてはなんとなく、業界1位だから処分の可能性が高く、名の知れない企業なら別に見逃してもいいやというように捉えられかねない気がしなくもないです。実際にはそういう意味ではないと思いますが・・・
まとめ
売上高などの数字の責任は、企業にとって極めて重要です。このために、多少の無理をしようと考えること自体は、何ら不思議なことではないと思います。しかしながら、法令遵守を怠ってしまうと結果的に数字にダメージを与えることがあります。今回の件においては、消費者が抱えるブランドイメージを毀損し、顧客流出の要因ともなってしまう可能性を考えると、そのようなリスクとリターンを検討することが重要であると考えさせられるものです。
表示については、抽象的な条文に抵触するかしないかの専門的判断が必要な場合もありますから、社運を賭けた広告という場合にこそ、専門家に相談する必要があると思います。
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