法教育の活発化
本年6月29日、消費者庁と日本弁護士連合会は、本年4月に成年年齢が引き下げられたことを踏まえて、消費者教育推進の重要性を確認し、そして若年者への消費者教育の一層の実践・定着に向けて、次のとおり連携を強化していくことを確認すると公表しました。
- イベントの開催
- 弁護士等の専門家の参画による実践的な消費者教育の推進
- 継続的な意見交換
また、法務省でも7月7日、法教育のホームページがリニューアルされています。
消費者教育が推進されているところ、そもそも消費者教育って何なのかという点について、触れたいと思います。
<参考>
消費者庁「日本弁護士連合会との連携強化について」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/consumer_education/lower_the_age_of_adulthood/event/#jfba)
消費者庁「若年者への消費者教育の実践・定着に向けた消費者庁と日本弁護士連合会の連携強化について」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/consumer_education/lower_the_age_of_adulthood/event/assets/consumer_education_cms203_220629_01.pdf)
消費者庁「消費者教育の推進に関する法律よくある質問と回答」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/consumer_education/law/pdf/130228QandA.pdf)
消費者庁「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/consumer_education/basic_policy/pdf/basic_policy_180320_0001.pdf)
法務省「法教育」(https://www.moj.go.jp/housei/shihouhousei/index2.html)
消費者教育
消費者教育とは?
昨今名前を聞くようになった「消費者教育」とは、いったい何でしょう。色々な説があると思いますが、今回は、法律から読み解いてみましょう。
わが国には、消費者教育推進法(消費者教育の推進に関する法律(平成24年法律第61号)。以下同じ。)という法律があります。
消費者教育推進法2条1項において「消費者教育」とは、消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育及びこれに準ずる啓発活動をいうとされています。
ところで、なぜ消費者の自立支援や、啓発活動をしなければならないのでしょう?つまり、なぜ消費者教育推進法は作られたのでしょう?
消費者教育推進法
消費者教育推進法の立法趣旨
消費者教育の必要性は、昭和30年代後半から主張されてきたとされています。例えば第1次国民生活向上対策審議会の答申(昭和38年6月15日)では、消費者保護のための基本的政策のひとつとして「消費者教育ならびに消費者保護に関する広報活動に力を注ぐこと。」が挙げられました。
一般消費者に対する消費者教育を社会教育により充実するとともに,学校教育における消費者教育を強化し,また,消費者組織の行う消費者教育事業を強化することによって,消費者保護について消費者自身の関心を高める必要がある。
また,消費者保護に関し,担当の官庁はそれぞれの法律制度,商品およびサービスに関する情報その他を消費者並びに生産・販売者に周知徹底せしめるための広報活動に力を注ぐことが必要である。
「第1次国民生活向上対策審議会 答申」から引用
その後も数次にわたって消費者教育については叫ばれており、昭和43年に消費者保護基本法(昭和43年法律第78号。以下同じ。)が制定されました。
その後、規制緩和・IT化・国際化などによって消費者を取り巻く環境が激変し、抜本的改革をする必要性に伴い、次のような改革が検討されました。
「消費者 = 保護対象」
↓
「消費者 = 権利主体」
一見、「言葉遊びか?」という感じもしますが、言ってみれば守りから攻めに転じたと考えてください。
このような検討から、消費者保護基本法の改正機運が高まり、平成16年に消費者基本法に名称が改められ、「消費者の権利の尊重」と「消費者の自立の支援」を消費者政策の基本とすること等が規定されました。
消費者教育の浸透状況
しかしながら、法律ができても消費者教育が十分浸透していないことが、平成24年4月の「消費者教育の推進のための課題と方向」という報告で取りまとめられました。
そこには、次のような点が課題として指摘されています。
- 学校での消費者教育推進のために必要な教員の研修機会が確保できていない。
- 授業時間の確保が難しい。
- 教材等が提供されていても活用しきれていない。
- 社会では消費者教育を実施する団体等があるが、連携が取れていない。
このような背景から、消費者が必要な情報を得て、自主的かつ合理的に行動できるように、幼児期から高齢期までそれぞれの時期に応じて、消費者教育を総合的かつ一体的に推進することが求められたため、消費者教育推進法が制定されました。
消費者教育推進法と消費者基本法の関係
ところで、消費者基本法があるなら消費者教育推進法っていらなくない?という疑問や、両者の関係がよくわからなくなると思います。
消費者教育推進法は、消費者基本法10条1項に定められている「国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定又は改正を行なわなければならない。」にいう「必要な関係法令の制定」の1つとして整理されています。
消費者教育推進法の目的
消費者教育推進法の目的は、ずばり「消費者教育を総合的かつ一体的な推進」です。
これを受けてかどうかはわかりませんが、冒頭述べたとおり、消費者庁を筆頭に日弁連と連携したりして、総合的一体的な組織体制を作っているような気がします。
消費者教育推進に関する基本的方針
消費者教育推進の基本的方針とは?
以上のような考え方や法律に基づいて、基本方針を定めなければならないとされています。すなわち、消費者教育推進9条は「政府は、消費者教育の推進に関する基本的な方針を定めなければならない。」としており、内閣総理大臣と文部科学大臣が閣議決定をします(同条④)。
この閣議は、二人だけではもちろんできませんから、消費者教育推進会議・消費者委員会やその他の関係者の意見も反映されます(同条⑤)。
これはおおむね5年ごとに検討されます(同条⑦)。
平成30年3月20日に変更の閣議決定がされ、平成30年度から平成34年度の5年間を対象とした当面の重点事項は、次の3点です。
- 若年者の消費者教育
- 消費者の特性に配慮した体系的な消費者教育の推進
- 高度情報通信ネットワーク社会の発展に対応した消費者教育の推進
まとめ
まとめ
このような法律や考え方に基づいた基本方針に沿ったものかはわかりませんが、昨今、消費者教育はかなりスピードを増して推進されている気がします。感覚ですが。
消費者庁が述べるように、本年4月に成年年齢が引き下げられたことが関係していることは容易に想像できますが、それでもめざましいです。
これは、暗号資産、メタバースその他のITの発達等も原因だと考えられ、これらについても知識を積み上げていく必要があると思います。
また、消費者基本計画も5年ごとに検討が加えられ、新たな消費者基本計画の展開にも注目です。
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