文化芸術分野の契約関係

query_builder 2022/08/02
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 本年7月27日、文化庁は、芸術家等が適切な契約関係の下、業務に従事できることを目的とした検討会の結果をまとめたと公表しました。


 芸術家等は、契約書等を取り交わす文化があまりなく、特にコロナ禍においては収入源が証明できないために国の補助金等を受け取れないことなどが問題視されていました。


 また、契約書等が存在しないために報酬等について揉めることがあるなど、適切ではない契約関係に基づいた活動が多いようです。


 そのため、今回、文化庁は「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けた検討会議」を開催し、検討してきたという流れです。


<参考>

文化庁「「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ)」を公表します」(https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93744101.html

文化庁「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けた ガイドライン(検討のまとめ)」(https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/93744101_03.pdf

文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ)

文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ)の概要


 冒頭述べましたとおり、芸術家等が不利な状況で業務をせざるを得ない状況というのが、散見されることが検討の発端です。


 そうすると、芸術家等になろうとする方がいなくなってしまい、ひいてはわが国の文化発展を考慮すると望ましくありません。


 そこで今回、検討会において、文化芸術基本法(平成13年法律第148号。以下同じ。)16条に定める芸術家等のうち、個人で活動する芸術家等が一方当事者となって、事業者や文化芸術団体等から依頼を受けて行う文化芸術に関する業務の契約関係を対象とすることが検討されました。


 「文化芸術に関する業務」とは何か?という点については、文化芸術基本法8条から12条辺りを参考にすれば、概ね次のとおりでしょうか。なお、芸術家等 が事務所等と契約するいわゆるマネジメント契約については、検討のまとめとしては及はしていないとされています(前掲文化庁ガイドライン2頁)


  • 文学
  • 音楽
  • 美術
  • 写真
  • 演劇
  • 舞踊
  • 映画
  • 漫画
  • アニメーション
  • 雅楽
  • 能楽
  • 文楽
  • 歌舞伎
  • 組踊
  • 講談
  • 落語
  • 浪曲
  • 漫談
  • 漫才
  • 歌唱
  • 茶道
  • 華道
  • 書道

文化芸術分野における契約上の課題


 冒頭でも述べましたとおり、芸術家等との間の契約は、関係者間の信頼関係や従来からの慣習等のために、口頭契約が多いとされています。


 また、依頼する芸術を契約書に落とし込むには、高度な専門知識が必要でしょう。なぜなら、芸術は感性によるところが多く、どのようなことをすれば、契約について債務の本旨に従った履行(民法§415①)といえるかが不明瞭だからです。


 例えば、落語家の古今亭志ん生師匠などは、高座に出てきて座ったと思ったらそのまま何も話さないで時間だけが過ぎ、実は寝ていたという、しかもそれで笑いを取ったという逸話があります。


 しかしこれに対して、契約どおりに業務を行っていないと主張すること自体は、できなくもないという難しいところがあります。


 このように、芸術を契約書に落とし込むには、かなりの難易度があります。したがって、当事者間で契約書を作成する負担が大きいという点が、検討会でも検討されていたようです。

文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ)で課題を踏まえてなされた検討の方向性


 このような課題に対して検討会では、次のような方向性を打ち出しています。


  1. 契約内容明確化のための契約の書面化
  2. 取引の適正化の促進


 先ほど述べましたとおり、契約書の作成は負担となりますから、メールなどでも構わないから記録を残すように促そうとしています。


 取引の適正化の促進の観点からは、契約において明記すべき事項等が列挙されています。少なくともこれらについては、言及しておいた方が、芸術家等にとっては有利だろうという計らいでしょう。


  • 業務内容 具体的な業務や期間等を可能な限り明確に。
  • 報酬等 双方で十分に協議、諸経費も明確に。
  • 中止・延期 不可抗力による中止・延期の際の取り決め。
  • 安全・衛星 事故やハラスメント防止の責任体制の明確化
  • 権利 著作物などの場合には許諾・譲渡の範囲
  • 内容変更 変更内容も書面により明確に。


 また、契約書のひな形も文化庁で提案されています(前掲ガイドライン12頁以降)。これらを用いるだけでも、だいぶ契約関係が明確化するでしょう。

まとめ

今後は官民一体となって取り組む


 芸術家等の契約関係には以上のような特色がありますところ、これを放置すれば様々な不都合が生ずることから、文化庁としても検討会において検討を重ねたようです。


 そして、今後は官民一体となって、中長期的に継続して取り組む必要性があるとし、また、相談窓口や業界団体においてルール作り等の環境整備に努めるなどを考えているようです。


 いずれにせよ、当事者間でトラブルが起きることは悲しいことですので、それを防ぐためにも、手間をかけても両者のコミュニケーションは大切にした方がよいと考える次第です。

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