SNS上で「安く買えるから振り込んで」などと声をかけられていませんか?
本年8月17日、第二東京弁護士会から、総務大臣等に宛てて、「SNSサービスを利用した違法行為に対する意見書(弁護士会照会への対応)」が送られました。
この趣旨は、SNS被害の救済を求める手続上で、総務省は、事業者に対し、弁護士法23条の2に基づくいわゆる弁護士照会に対する回答を適切に行うよう指導してほしいという内容です。
SNSサービス上での詐欺被害は、年々増加しており、泣き寝入りを強いられる場合も少なくないようです。
そこで今回は、SNSサービス上での被害について、第二東京弁護士会の意見書を参考に、どのような現状があるのかについて触れていきたいと思います。
<参考>
第二東京弁護士会「SNSサービスを利用した違法行為に対する意見書(弁護士会照会への対応)」(https://niben.jp/news/news_pdf/opinion20220817.pdf)
国民生活センター「SNSをきっかけとした消費者トラブルにご注意! 中高「生」だけじゃなく中高「年」も」(https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20200409_1.html)
DIAMONDonline「SNS詐欺にだまされる若者が増加、学生ローンを組まされる悪質例も」(https://diamond.jp/articles/-/226169?page=2)
PRTIMES「イベント中止でSNS取引増加の予兆のため緊急調査」(株式会社ウェイブダッシュ。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000124.000006408.html)
SNSサービス上での詐欺被害
弁護士法23条の2とは?
第二東京弁護士会が意見の趣旨としている、弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号。以下同じ。)23条の2とはどのようなものなのでしょうか?
条文を見てみましょう。
(報告の請求) 第二十三条の二
弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
要するに、受任している事件について、私企業などに資料の提出などを求めることが法律上できるというものです。
弁護士によってはこの制度を活用して事実調査や証拠収集を行っています。他方で、私企業側としては、営業秘密や、開示することによって顧客からクレームや損害賠償を請求されることを危惧して、照会に応じない場合もあります。
今回第二東京弁護士会が問題としているのは、SNSサービスにおけるアカウント情報等について、弁護士は照会したい、他方で、私企業は開示したくない、という状況が続いており、証拠収集がやりにくく、被害者救済を困難としていると指摘しています。
SNSサービス上でのトラブル
国民生活センターによれば、SNSサービス上でのトラブル(この項においては詐欺以外も含みます。)は、年々相談件数が相談しているとしています。
前掲国民生活センターから引用
2010年度は3,143の相談件数だったものが、2019年度(ただし、2月末まで)では実に19,251にまで上っています。
SNSサービス上での詐欺の相談事例
国民生活センターでは、例えば次のようなものが列挙されています。
- アパレルバイヤーに興味はないかと誘われ、転売ビジネスの契約をしたが稼げない
- SNSで知り合った女性とやりとりし、これまで370万円費やしたが会えない
- 「チケットを譲る」との書き込みを見て支払ったが、チケットが届かない
- コンサートグッズの代行購入を依頼し振り込んだが、グッズが届かない
特に、法的救済を求める場合には、相手方の情報として、正しい氏名と住所は必須です。
ところが、SNSでは銀行口座などと異なり、厳格な本人確認をすることはほとんどありません。そうすると、相手方の名乗っている氏名が、本当にその名前なのか?ということを担保するものは何もないのが通常です。これが、詐欺の実行者にとっては都合がよいのです。
なお、SNS上で取引をする方の7人に1人は詐欺被害に遭っていると、前掲株式会社ウェイブダッシュは述べています。
前掲株式会社ウェイブダッシュから引用
SNSサービス上での詐欺被害を防ぐには
まずは、SNSサービス上での取引では「うまい話には裏がある」と思いながら取引行為をするのが大事です。
なぜなら、不安な要素が多いからです。例えば、前述のとおり、相手方が本当にその人物なのか?ということすらも、通常であれば確証は持てません(運転免許証の写しなどを見せてもらっていないので。)。
また、連絡が急に途絶えるなどもあり、こちらも不安です。実際に、振り込んだ後に連絡が途絶え、商品が届かないという事件は、相当数存在するのは、既に公知の事実です。
そうすると、「自分の財産は自分で守る」という意識が不可欠です。
この点について、国民生活センターでは、次のようなアドバイスをしていますので、ぜひご参考にしていただき、詐欺被害に遭わないように気を付けましょう。
- SNS上の相手が本当に信用できる相手なのか、慎重に判断しましょう。
- 大幅な値引きなどをうたうSNS上の広告や、「簡単に儲かる」などの投稿やメッセージは鵜呑みにしないようにしましょう。
- 家族でSNSの利用方法を話し合うとともに、ペアレンタルコントロールやフィルタリング機能も活用しましょう。
- 身分証明書の情報は絶対に渡さないようにしましょう。また、個人情報や自分の写真、身元が分かるような書き込みは安易に投稿しないようにしましょう。
- 不安に思った場合や、トラブルが生じた場合には、すぐに最寄りの消費生活センター等へ相談しましょう。
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