景品表示法検討会第4回議事録から
本年6月23日に開催された、第4かい景品表示法検討会の議事録が公表されました。
今回の議事の主なテーマは、次の3つです。
- 効率的かつ重点的な法執行の実現
- デジタル化等の社会状況の変化への対応
- 消費者利益の回復の充実等
このうち、効率的かつ重点的な法執行の実現について、読んだところについて触れてみたいと思います。
<参考>
消費者庁「第4回 景品表示法検討会(2022年6月23日)」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_004/029029.html)
景品表示法検討会
効率的かつ重点的な法執行の実現の概要
この点、課徴金納付命令、確約手続(独占禁止法違反の疑いについて、公正取引委員会と事業者との間の合意により自主的に解決する仕組み。)の導入、特定商取引法との連携などが取り上げられています。
これは、悪質事業者への対処をどうするかといった点や、そもそも悪質事業者という認定はどのように行うべきかといった点が関係しています。
現行景品表示法では、デジタル化の急成長なども相まって、悪質事業者への対処が若干後手に回っているところがあるようで、その対策として、上記のような法整備をすべきではないかという感じのようです。
課徴金納付命令
課徴金納付命令については、告示違反についても、課徴金納付命令を発令できるようにしたらどうかという点も、議論されています。
前提として、現行景品表示法においては、課徴金納付命令が発出は、景品表示法5条1号及び2号についてのみとなっています。
(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 (略。いわゆる優良誤認)
二 (略。いわゆる有利誤認)
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
(課徴金納付命令) 第八条
事業者が、第五条の規定に違反する行為(同条第三号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは、内閣総理大臣は、当該事業者に対し、当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。(以下、略)
その理由は、法律による行政の原理(一般に、行政活動は、法律に従って行わなければならないという原理をいいます。)が関係しています。
すなわち、まず、課徴金納付命令は、国民に財産を納付させるということから、国民の財産権の侵害という結果を生じさせます。そうすると、これは行政処分(公権力の主体である国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務その他の法的地位を形成し又は変動することが法律又は条例によって認められているもの。最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁。)に当たります。
そうすると、このような行政処分の根拠は、法律による行政の原理からすれば、国民が決めた法律に従って運用されるべきというのが、現在の行政法学上の一般的解釈となっています。
ところで、現行景品表示法5条3号の内容は、告示として内閣総理大臣が指定しています。そして、この告示の内容は、内閣総理大臣(が委任する消費者庁長官。現行景品表示法§33①)という行政権が定めています。法律ではありません。
よって、現行景品表示法は、5条3号に対しては、課徴金納付命令の対象とはしていないと説明されています。
そこで今回の議事では「本当にそれでええんか?」という議論がされています。今後の動きによっては、課徴金納付命令の範囲が広がる可能性もあるでしょう。
特定商取引法との連携
課徴金納付命令について述べましたが、これと併せて、特定商取引法との連携によって、悪質事業者の責任を追及する仕組みを構築すべきではないかという点も、議論されています。
どのように連携するかは、あまり具体的には述べられていません。今のところ、返金などの民事の効果が発生するような仕組みにしていければなぁという程度です。
もっとも、特定商取引法は、消費生活相談の現場においては最も多く使われる法律であるので、この部分が整備されると、現場の広告表示のやり方も大きく変わるでしょう。
まとめ
ざっと見た感じだと以上のような点について、今後詳しく検討していくべきではないかという話がされているようです。
このほかにも、悪質事業者の経営者個人に対して責任を追及できる仕組みや、業務禁止などもできるようにすべきではないかなど、私としては、より深く影響を与える法整備がなされるのではなかろうかという印象を抱いています。
今後の動きに、深い注意が必要です。
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